私のぷくっと膨らんだキモチ、今が食べごろです
「桜木、これいる?」

「え、これは…?」

これはまた別の日、眞尾先輩が私の前に大福を差し出した。

しかもこれは香天屋のこの時期限定、新茶大福だ。
名前の通り新茶の季節しか食べられないもちもちの大福で包装紙を開ける前からいい香りがしてる。

「…なんで私に?」

チラッと隣を見ると、外回りから戻って来た眞尾先輩はさっそくパソコンのメールチェックをして今日の仕事状況を確認していた。

「あの、もしかして…」

これは外回りでもらったけど食べられないから私にくれたってこと?
私が見てるから、いつもじーっと見てるから、見られるのが嫌で食べたくないから…もしかして、遠回しの注意か何か?

「桜木、好きでしょ?」

なんて思ってたのに、スッと指差したから。

「それ」

視線はパソコンの画面を見たまま、指だけは私の前の大福を差して真剣な瞳でメールを見てた。
そんな横顔を、隣から伺うようにして。

「…好き、ですけど」

そうなんですけど、それはそうなんですけど。

私の前に置かれた大福はまるっとして、眞尾先輩のぷくってしたほっぺみたいだなって思いながら手のひらに乗せた。

「それ食べてる時嬉しそうだよ」

ふとキーボードを叩くのを止めたかと思えばこっちを見てふふっと笑っていた。

大福なんか食べなくてもキュッと上がった頬は子供みたいで、私より3つも年上だなんて思えない。

「…見てたんですか?」

「え、何が?」

「いえ、なんでもないです」

だってなんとなく思い出してしまうんです、大福を見てると。

もっちもちでまるっとした大福を見てると、思い出してしまうんです…


眞尾先輩のこと。


そんなこと言ったら怒られるんじゃないかなって思うと言えないけど。


でもこれは褒めてるんですよ?

触ったら気持ちよさそうなんですもん、眞尾先輩って。


「あ、そうだ桜木」

せっかくなんでさっそくパクッとひとくちかぶりついたら名前を呼ばれて焦った、唇が粉まみれだったから。
大福はおいしいけど、食べるのにちょっと気を遣うのが難点だ。

「今日って夜空いてない?」
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