乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚
第一話 ヴァレリアン、奇怪なループの始まり
(1)
あの古い時代の要塞区画の周辺は今では「内城」と呼ばれて、「支配階級」である魔族の専住区になっているようだった。かつての過ぎ去りし往時には狂った人間の特権階級が、一般人民に弾圧・搾取と詐欺洗脳しながら立てこもっていた場所なのだったから、因果なものだろう。
だが、ここまでやって来るのに見た限りでは汚染されきっていた環境は数百年くらいかけて大幅に改善されたと言ってよい。文明が中世や原始時代にまで逆行して、汚染源と環境負荷がなくなったことが最大の理由だったろう。それでも蓄積していた汚染はすぐには元には戻らなかったし、枯渇した地下水流がそのまま地盤沈下して地形が変わっていたり、重度の核汚染で死の砂漠になったり、化学汚染や気候崩壊で荒れ地や岩石砂漠になった場所も少なくない。
何より、住民の人間の人種や民族そのものががらりと変わっているようだった。
ヴァレリアンが知る限り(彼にとってすら書物や資料で知識があるだけなのだが)、先史時代にはいくつもの忘れられた王朝がこの大陸を支配していた。けれども、数千年の間に地続きゆえに周辺の人間が流入しまくって、減少した人口を埋めて混血で改変していったのだという。
(これも必然の結果だったな)
およそ人間として、最後の集団支配したイデオロギー集団(武装カルトに近い存在だったらしい)は全世界に人口爆発の余剰で侵略やスパイ工作をして、あちこちに詐欺行為や生物兵器テロをやりまくり、軍事恐喝を繰り返した。もちろん最後には全世界から袋叩きになったし、その時点で国内全域は自家中毒のような破滅状態だったらしい。
最終的に「魔族」を使った問答無用の暴力支配エリアに入れられてしまった(暴走した魔族たちから自国を防衛できずに結果的にそうなった面も多々ある)のも、それが理由なのだろう。過去の歴史を振り返ってみれば、現在に魔族帝国の版図になっているのは、先史時代の往年に問題を起こしていた国々や自己統治すら満足にできなかった途上国だった地域が多いようだ。
だが元の住民にとってせめてもの幸運だったのは、魔族とは別の「庇護者」である人工進化種族を自前で準備や配置できたことだろう。このあたりの「ドワーフ」は古いチノ人の遺伝子や血統がベースになっており、海の向こうのヤポニカが協力したらしい(当時のヤポニカ系のエルフ種族を造った魔術進化技術が多く移植や応用されたと聞く)。大陸エリアの大チノ帝国文明と海洋エリアのヤポニカ皇国で対立や抗争していたそうだが、それでも隣の大陸が丸ごと魔族帝国になるのは脅威だっただろうし、また親交や遠い血縁(従兄弟のような間柄)もある国や地域が地獄になり果てるのは心情的受け入れ難かっただろう。
姿なき声が話しかけてきた。
「どーよ? 前に来たときより、バッチリガッツリと環境改善されてるだろ?」
「ワンちゃん、えらい機嫌が良いじゃねえか」
たしか大河を辿ったり渡るときにも、古い河川の詩歌を歌って上機嫌だったようだ。古い友人であるためにノロケているらしい。
八十年前に来たときにも似た調子だったような覚えがあるが、もっとも環境壊滅していた時期のトラウマと苦難の記憶はよほど重いらしい。
「あたぼーよ! 「もう終わりかもしれない」と思ってたのがここまで復活したんだぜ? 農業ができてるだけでも一大進歩じゃん? 二百年前には毒で食えたもんじゃなかったから、それで住民が病気や死にまくっていただろ?」
「でもワンちゃん、地獄の暴力支配だぞ?」
「だからリセットかますのに、おめーを呼んだんだよ。一遍にリセットしたらまた自滅するだろうし回復も遅くなるかもだから、酷いところや頃合いを見て順番にやってくしかねえ。それから「キング」と呼べよ、「ワン」ってヤポニカ語だと犬の鳴き声なんだぞ? てめーってヤポニカ人と東白人のブレンド血統ベースだし、知ってるだろ?」
「そのアバター、犬じゃなくってレッサーパンダってんだろ?」
この会話相手の「ワンちゃん」とは犬ではない。
それは「王」という苗字のチノ語で「キング」。
彼は地域の「地霊AI」で魂の宿ったコンピュータ人格なのである。表示される姿はレッサーパンダなのだが、大昔にはこの大陸エリアが発祥地だったという(他の地域にいたのは絶滅してしまったそうだが)。人工知能を人造ボディに宿して登場するときにも定番になっており、ドワーフたちからは「神」や「仙人」と崇められている。
あの古い時代の要塞区画の周辺は今では「内城」と呼ばれて、「支配階級」である魔族の専住区になっているようだった。かつての過ぎ去りし往時には狂った人間の特権階級が、一般人民に弾圧・搾取と詐欺洗脳しながら立てこもっていた場所なのだったから、因果なものだろう。
だが、ここまでやって来るのに見た限りでは汚染されきっていた環境は数百年くらいかけて大幅に改善されたと言ってよい。文明が中世や原始時代にまで逆行して、汚染源と環境負荷がなくなったことが最大の理由だったろう。それでも蓄積していた汚染はすぐには元には戻らなかったし、枯渇した地下水流がそのまま地盤沈下して地形が変わっていたり、重度の核汚染で死の砂漠になったり、化学汚染や気候崩壊で荒れ地や岩石砂漠になった場所も少なくない。
何より、住民の人間の人種や民族そのものががらりと変わっているようだった。
ヴァレリアンが知る限り(彼にとってすら書物や資料で知識があるだけなのだが)、先史時代にはいくつもの忘れられた王朝がこの大陸を支配していた。けれども、数千年の間に地続きゆえに周辺の人間が流入しまくって、減少した人口を埋めて混血で改変していったのだという。
(これも必然の結果だったな)
およそ人間として、最後の集団支配したイデオロギー集団(武装カルトに近い存在だったらしい)は全世界に人口爆発の余剰で侵略やスパイ工作をして、あちこちに詐欺行為や生物兵器テロをやりまくり、軍事恐喝を繰り返した。もちろん最後には全世界から袋叩きになったし、その時点で国内全域は自家中毒のような破滅状態だったらしい。
最終的に「魔族」を使った問答無用の暴力支配エリアに入れられてしまった(暴走した魔族たちから自国を防衛できずに結果的にそうなった面も多々ある)のも、それが理由なのだろう。過去の歴史を振り返ってみれば、現在に魔族帝国の版図になっているのは、先史時代の往年に問題を起こしていた国々や自己統治すら満足にできなかった途上国だった地域が多いようだ。
だが元の住民にとってせめてもの幸運だったのは、魔族とは別の「庇護者」である人工進化種族を自前で準備や配置できたことだろう。このあたりの「ドワーフ」は古いチノ人の遺伝子や血統がベースになっており、海の向こうのヤポニカが協力したらしい(当時のヤポニカ系のエルフ種族を造った魔術進化技術が多く移植や応用されたと聞く)。大陸エリアの大チノ帝国文明と海洋エリアのヤポニカ皇国で対立や抗争していたそうだが、それでも隣の大陸が丸ごと魔族帝国になるのは脅威だっただろうし、また親交や遠い血縁(従兄弟のような間柄)もある国や地域が地獄になり果てるのは心情的受け入れ難かっただろう。
姿なき声が話しかけてきた。
「どーよ? 前に来たときより、バッチリガッツリと環境改善されてるだろ?」
「ワンちゃん、えらい機嫌が良いじゃねえか」
たしか大河を辿ったり渡るときにも、古い河川の詩歌を歌って上機嫌だったようだ。古い友人であるためにノロケているらしい。
八十年前に来たときにも似た調子だったような覚えがあるが、もっとも環境壊滅していた時期のトラウマと苦難の記憶はよほど重いらしい。
「あたぼーよ! 「もう終わりかもしれない」と思ってたのがここまで復活したんだぜ? 農業ができてるだけでも一大進歩じゃん? 二百年前には毒で食えたもんじゃなかったから、それで住民が病気や死にまくっていただろ?」
「でもワンちゃん、地獄の暴力支配だぞ?」
「だからリセットかますのに、おめーを呼んだんだよ。一遍にリセットしたらまた自滅するだろうし回復も遅くなるかもだから、酷いところや頃合いを見て順番にやってくしかねえ。それから「キング」と呼べよ、「ワン」ってヤポニカ語だと犬の鳴き声なんだぞ? てめーってヤポニカ人と東白人のブレンド血統ベースだし、知ってるだろ?」
「そのアバター、犬じゃなくってレッサーパンダってんだろ?」
この会話相手の「ワンちゃん」とは犬ではない。
それは「王」という苗字のチノ語で「キング」。
彼は地域の「地霊AI」で魂の宿ったコンピュータ人格なのである。表示される姿はレッサーパンダなのだが、大昔にはこの大陸エリアが発祥地だったという(他の地域にいたのは絶滅してしまったそうだが)。人工知能を人造ボディに宿して登場するときにも定番になっており、ドワーフたちからは「神」や「仙人」と崇められている。
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