乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚
第三話B 探索・推理とファーストコンタクト
(1)
ヴァレリアンがまず考えた「未来偵察者」の所在候補は「剣闘士」だった。短時間で何度も死ぬようなチャレンジするという条件からだ。あるいは魔族の下僕や奴隷で最近に状況が悪化した者や、食肉用の人間なども考えられはしたが。
ちょうど「二十戦のラルティ」とやらが、魔獣キメラライオンと戦っているところだった。
(あれは、遺伝子改良種の血を引いているようだが)
だが確証はない。
様子を見守り、勝利後に近く観察してみたけれどもどうにも違うように感じる。まさかためしに殺してみるわけにもいくまい。
厄介なのは「未来偵察者」の時間遡行ループはごく一部の資質がある者にしかわからない。ほとんどの人間どころか、巻き込まれていてすらはっきり覚えていないこともあるようだ。
(2)
丸一日ほど闘技場で見物して、出場選手(自由人だけではなく奴隷も)なども調べてみたが、見当をつけて絞り込むことすら困難だった。
強いて考え得る条件としては「ここ二三日の間に参戦した者」だろう。タイムループが発生するということは、原因の未来偵察者が「死んだ」結果なのだから。そしてタイムループはごく最近しか起きていないならば「ごく最近に危機的な立場になったりチャレンジを繰り返している」ことになる。
(どうやら剣闘士ではないのか?)
観戦中にも時間遡行は発生していたが、いずれも試合での選手の死亡とはタイミングが無関係なのだった。だとすると、原因になっている時間偵察者は剣闘士の選手だとは考えにくい。
(そもそも、どうして巻き込まれたんだ?)
その点も気にかかる。
未来偵察者の能力というのは時間そのものを巻き戻すというよりは、主観の自我と認識を過去の時間に戻すに近い。そして、巻き込まれるのは関係者や特別な縁があるような者に限られる(それですら記憶に残っていなかったり曖昧なことが多々ある)。
ヴァレリアンは頭を傾げざるを得ない。
なぜなら彼がこのあたりの地域に立ち入るのは七八十年も前だったし、そのときにはこんな現象は起きなかった。元凶の人物と、いったいどんな縁があるというのだろうか? 皆目にわけがわからない。
パッと思いつきでありそうなのは(これから彼の所業で犠牲になるはずの)魔族だったが、発動のタイミングからして違うように思う。だとしたら全く無関係な誰かに巻き込まれたと推測できるが、それなら「いったいどういう縁で?」ということになる。辻褄が合わない。
そうこうしている間にも、何度も何度も時間ループが発生し続けた。
(3)
結局、発見は偶然だった。
街角で、檻の並んだ通りがあった。
その中の若い娘の一人が「殺してください!」とヒステリーしている。
彼女が通行人から仕込み杖で刺し殺されたときに異変は起きた。時間遡行が起こったのだ。
(4)
ループ後に同じ場所に向かうと、彼女は歌を歌っていた。知っている歌だ。遠い昔の神殿で。
そしてヴァレリアンは我が目を疑った。
知っている女だった。
おそらくは子孫なのだろうか?
(おいおい! あの性悪女かよ!)
よく覚えている。
彼女の子孫を同一視するのはどうかと思ったけれども、因縁を感じざるを得ない。
ヴァレリアンがまず考えた「未来偵察者」の所在候補は「剣闘士」だった。短時間で何度も死ぬようなチャレンジするという条件からだ。あるいは魔族の下僕や奴隷で最近に状況が悪化した者や、食肉用の人間なども考えられはしたが。
ちょうど「二十戦のラルティ」とやらが、魔獣キメラライオンと戦っているところだった。
(あれは、遺伝子改良種の血を引いているようだが)
だが確証はない。
様子を見守り、勝利後に近く観察してみたけれどもどうにも違うように感じる。まさかためしに殺してみるわけにもいくまい。
厄介なのは「未来偵察者」の時間遡行ループはごく一部の資質がある者にしかわからない。ほとんどの人間どころか、巻き込まれていてすらはっきり覚えていないこともあるようだ。
(2)
丸一日ほど闘技場で見物して、出場選手(自由人だけではなく奴隷も)なども調べてみたが、見当をつけて絞り込むことすら困難だった。
強いて考え得る条件としては「ここ二三日の間に参戦した者」だろう。タイムループが発生するということは、原因の未来偵察者が「死んだ」結果なのだから。そしてタイムループはごく最近しか起きていないならば「ごく最近に危機的な立場になったりチャレンジを繰り返している」ことになる。
(どうやら剣闘士ではないのか?)
観戦中にも時間遡行は発生していたが、いずれも試合での選手の死亡とはタイミングが無関係なのだった。だとすると、原因になっている時間偵察者は剣闘士の選手だとは考えにくい。
(そもそも、どうして巻き込まれたんだ?)
その点も気にかかる。
未来偵察者の能力というのは時間そのものを巻き戻すというよりは、主観の自我と認識を過去の時間に戻すに近い。そして、巻き込まれるのは関係者や特別な縁があるような者に限られる(それですら記憶に残っていなかったり曖昧なことが多々ある)。
ヴァレリアンは頭を傾げざるを得ない。
なぜなら彼がこのあたりの地域に立ち入るのは七八十年も前だったし、そのときにはこんな現象は起きなかった。元凶の人物と、いったいどんな縁があるというのだろうか? 皆目にわけがわからない。
パッと思いつきでありそうなのは(これから彼の所業で犠牲になるはずの)魔族だったが、発動のタイミングからして違うように思う。だとしたら全く無関係な誰かに巻き込まれたと推測できるが、それなら「いったいどういう縁で?」ということになる。辻褄が合わない。
そうこうしている間にも、何度も何度も時間ループが発生し続けた。
(3)
結局、発見は偶然だった。
街角で、檻の並んだ通りがあった。
その中の若い娘の一人が「殺してください!」とヒステリーしている。
彼女が通行人から仕込み杖で刺し殺されたときに異変は起きた。時間遡行が起こったのだ。
(4)
ループ後に同じ場所に向かうと、彼女は歌を歌っていた。知っている歌だ。遠い昔の神殿で。
そしてヴァレリアンは我が目を疑った。
知っている女だった。
おそらくは子孫なのだろうか?
(おいおい! あの性悪女かよ!)
よく覚えている。
彼女の子孫を同一視するのはどうかと思ったけれども、因縁を感じざるを得ない。