乳吸鬼♀&未来偵察メイド(裏編):ヴァレリの前日譚

第三話C 呪いの恋、やり直せますか?

(1)
「そいつ、いくら?」

 ヴァレリアンは檻の見張り役にたずねた。
 放っておいてまた死にまくられては困る。
 それに。
 このチャンスにあの女への意趣返しができる。しょせんは子孫でしかないにしろ、こんなことになったのには因縁を感じてしまう。
 どうせ女なんか、突き詰めたら「男と同じ人間」と「肉と穴」でしかない。二束三文で体を売る女いくらでもいる。ただし何かしら付き合いや感情があれば事情は微妙に変わってくる。たとえそれが一方的なくだらない感傷だったとしても。


(2)
 まだ怯えながら安心している彼女をつれて、まず手近な屋台でハンバーガーとコーヒーを買い、差し出して食わせた。都市部だけでもコーヒーなんて嗜好品が出回っていることからも、この地方全体が回復してきていることがわかる。

「あの歌は?」

「うちの家に伝わっている民謡やおまじないみたいなものです」

「あれは古い神殿のお祈りの歌と似ている」

「ご存じなんですか? 私だってよく知らないんですけれど」

「名前は?」

「レトラです」

「俺はヴァレリアン。ヴァレリでいい」

 とっさに旧知と同じ人間のように思った相手と自己紹介しているのは奇妙な気分だった。だが彼女の不死身さは「寿命や天命の間は死んでも回帰する」だけであって、ヴァレリアンのように不老不死なわけではない(正確に言えば、ヴァレリアンは遺伝子操作改良と生体義肢によって、不老で回復力が桁違いなだけで、絶対に死なないわけではない。「これまで誰も彼を倒せなかった」だけのことだ)。
 近くで観察すれば、やっぱりあの女と似てはいるが、やはり別の人間なのだ。どうも子孫らしいし、姉妹に見えることだろう。

「それを食べたら服を買いに行こう」

 連れ歩くのに、あんまりにも「奴隷」然では目だちすぎる。
 レトラはホッと安心の表情を浮かべながら、まだ不安そうでいる。彼女の立場からすれば当然の反応ではあるだろうけれど。

(ずいぶん素直で、性格良いんじゃないか?)

 だが、あの女だって自分自身の「未来偵察者」としての時間回帰の能力がなかったり知らなかったら、このレトラと大差なかったかもしれない。


(3)
 地霊AIのキングが目を丸くした。

(すっかりデートかハネムーンの気分か? お前が女の機嫌とりだすなんてな。飾り物まで買ってデコレーションするとか、遊びすぎじゃね?)

(俺らの「魔族潰し」作戦はどうせ一年や二年遅れても、たいした違いはない)

(そいつはそうだが)

(この子を安全なところに連れて行って、それからでいいさ)

 すっかり町娘になったレトラの目線に、懐かしいような恨めしいような気持ちになる。
 今回は、ヴァレリアンが彼女をからかう側だ。
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