おにぎり☆プリンセス

大人は嫌い

2004年7月25日!明日から夏休み!
 でもまだ学校じゃん…だる。
 朝起きたら夢の国のプリンセスになってないかなあ。
 一面ピンクだらけ、いちごとケーキだらけでふわふわの雲に囲まれてる♡
 
 うーん、でも召使いのおにぎりはいるわ。
 あ、今日珍しくアイツが前にいる、いつも遅刻なのに。
 
 背中叩いてやろ☆
 
 バシッ!

「っ……、どうしたの?姫ちゃん」
 
「ねえ、りゅうってさ、ドラゴンの龍じゃん?全然龍って感じじゃないよね」

「……うぅ…ぐすっ」
 
 また背中をぶっ叩いた。
 
「男がメソメソしてんじゃねーよっ!」
 
「うぅ……ひどい、でも俺ってどっちかっつったら……豚だよね」
 
「マジそう……てゆーかさ。」
 
「昨日の、謝ってよ!!」
 
 りゅうは戸惑ってた、何が悪いのかわからない顔をしてる。
 
「ご、ごめんなさい?」
 
「……別にいーけど」
 
 数学の授業、りゅうは自習せずずっと無心で黒板を眺めている。
 先生が見回りにきて、たまたまりゅうの机の惨状を見た。
 
 なにか慰めとか、励ましとか言うのかと思ったら、先生は気まずそうに目を一瞬で逸らした。
 
 先生、ずるーい!結局おにぎりBOYのこと見てるの、姫しかいないじゃん☆
 
 やっぱり大人ってめんどくさい、結局は自分に都合がいいことしかやらないんだから!
 
 私も、だけどネ♪♪
 
 ……かわいそうだから、今日は私のお城に招待してあげよう
「ねえ、おにぎり。今日姫のお家来る?」
 
「えっ、いいの!?ありがとう!」
 
 おにぎりは目をキラッキラさせて、思いっきり笑ってた。ウケるー!
 
 下駄箱で座ってると、おにぎりが後ろからとことこ歩いて私の隣に座った。
 
「ねえ、姫ちゃん!一緒に帰ろう」
 
「一緒に帰るって何、私はそのために待ってたんだけど」
 
 りゅうは少し耳を赤くして、息を漏らして笑った。
 
「あっ、そうだよね……」
 別にいつもはそんなつもりはないのに、なぜか毎回おにぎりと一緒に帰ってる。
 もしかしてこれ運命ってやつ?だとしたらなんでおにぎり?
 
 それとも私がこいつをなんか救わないといけない系なの?
 ムリムリー!普通それは王子様がプリンセスを助けるじゃん!なんで私がやらないといけないの?
 普通は、囚われた姫とか眠れる姫を王子様が助けに行って、最後には愛のキスをって展開でしょ!!
 
「姫ちゃん、何難しい顔してるの?」
 
「えっ、別に……」
 
「……そっか」
「…………………………」
 
 うわー!気まずい!なんか話してよ!そっちから!
 あーあ、もし仮にこいつが姫の王子様♡だとしたら人生終わったんだけど!!

 メガネでデカくて頭悪くて超いじめられっ子、それに対して私はこんなに可愛いのに!
 ……まあでも家庭科上手だし国語はできるし、ちょっと頭ヤバいけど真面目で外国ハーフだからなぁ……
 
 でも笑い方キモイのやだな。
 
「うーん……」
 
「姫ちゃん……なんかやっぱり体調わるい?」
 
「だからなんでもないってば!!」
 
「ギャハハ……」
 
 私の家、綺麗な一軒家で真っ白♪
 別にこれでも悪くはないんだけど、私はもっと可愛くてコテージな感じなのが欲しいの!
 
「あ、お邪魔します……」
 
 姫のママはびっくりしてた、別にプリンセスがゲストを招待して何が悪いの。
 
「あれっ、姫!?急に岩本くん連れてきたの?!」
 
「そうだけど、なにが悪いの?」
 
「ママ困るよぉ……、だってお部屋掃除してないしお菓子なんにも用意してないよ?」
 
「別にいいの!私の部屋に行くだけ!」
 
 あーあ、大人ってめ!ん!ど!く!さい!
 おにぎりはなんかすごく申し訳なさそうにしてて、こっちが悪者みたいで最悪。
 
「な、なんかすみません……」
 
 私はおにぎりと一緒に2階に上がった、白い階段を登って姫の部屋と書かれた扉を開ける。
 入った瞬間甘いコロンの匂いが脳に直撃して、カワイイいちごのぬいぐるみが目をピンクに染める。
 いちご!うさぎ!猫!クマ!それに水玉と音符とハート柄で私のお部屋はイッパイ♡♡♡
 
「……なんか、姫ちゃんらしい部屋だね」
 
「そりゃあプリンセスですもの」
 
「そ、そっか」
 
 やることが特になくて、適当に私は自分のツインテールをいじっていた。
 うーん、なんでこいつはずっとソワソワしてて、話振ってこないのー?
 
「……せっかく来たけど、りゅうは私の部屋でなにしたいの?」
 
「えっ?ひ、姫ちゃんから誘ったから、姫ちゃんがなにかしたいのかと思って……」
 
「はあ?私は別になんにも……」
 
「……」
 はあ、こいつなんなの。プリンセスとか以前に話してても全然楽しくないじゃない!サイテー!
 
 しょうがない、私がなんか振ってやるか……
 
「ねえ、大人って嫌い?」
 
「えっ?ふ、普通かなあ……」
 
「私は嫌いよ。だって見て見ぬふり、言い訳ばっかり、あんなの適当なルールを常識って言って生きてるだけの子供だわ」
 
「……そうかなあ」
 
「だって、お姫様の王国みたいにキラキラしてないし、プリンセスを迎えに来てくれる王子様はいないし、毎日スーツを着て食べるものはケーキじゃなくて不味い弁当」
 
「そんな生活するなら、私は一生子供のプリンセスよ。子供のうちは働かないで、好きなもの買ってもらえてるのよ。めんどくさい勉強はサボれば全部解決」
 
 りゅうは少し顔をうつむかせて、頷いた。
 
「かもね」
 
「そもそもこの世にプリンセス以外いらないのよ!主役は1人でいいの?十人十色?嫌よ!私だけがピンク色を持ってればいいの!それと王子様が1人いればいいの!2人だけでいい!」
 勢い余って、机をバンと叩いた。
 
「……クラスメイトは?」
 
「いらない」
 
「親は?」
 
「プリンセスになればいらないわ」
 
 りゅうは最初ドン引いてたけど、次第に私の意見に納得したみたいだった。
 
「じゃあ、俺は……」
 
「ひ、姫ちゃんの、何?」
 
「うーん、多分王子?」
 
 りゅうは少し照れながら、安いシャンプーの匂いがする頭をかいた。

「そっか……」
 
 急にりゅうは悲しそうな顔をして言った。
 
「最初から、2人だけだったら良かったのにね」
 りゅうはいきなり私の腕をバッと掴んで、吐息をかけてくる。
 
 おえー!
 
 隣から私の口に舌をねじ込ませてきた。
 口の中でりゅうの舌がぐちゃぐちゃ動いてる。
 
 な、何?また!?
 またべろぉって、あの時と一緒。
 
 なんで毎回会う度にどこか舐めていくの?犬なの?
 マジでキモイわー。
 
 べろんべろん♡
 
 ……そんなことどうでもいいから掴まれてる腕が痛い!男の子ってなんでこんな力が強いの?
 あーあ、プリンセスに力加減できないなんてオトコノコとして失格!!
 
 りゅうはなんか最中フガフガ言っててキモかった。
 しかもなんか鼻血をボタボタ垂らしてて、血が私の膝に垂れたし。
 
 はぁ、結局私はうつむいたまま、何も言えなかった。
 
 ドアがノックされて、姫のママが顔を覗かせる。
 
「ねえ、岩本くん、もう5時だけどお母さんは大丈夫?」
 
「あっ、じゃあもう帰ります……」
 
 私たちは一階に降りた、最初登る時は短く感じた階段が今じゃ迷路のように長く感じた気がする。
 
「ねえ、おにぎり。明日一緒に喫茶店行こうよ」
 
 りゅうは最初メッチャ嬉しそうだったけど、次第に悲しそうな顔をした。
 
「俺、すごく行きたいけどお金ないんだ……」
 
 だから何よ、この私!と一緒にデートに行けるってのに、お金の心配してるの?
 
「ふーん、じゃあ何も頼まなきゃいいじゃない」
 
「そ、そっか、そうだね……」
 
 なんでこいつこんな簡単なことも分からないの?頼むお金が無いなら頼まなきゃいいじゃん!
 やっぱりこのおにぎり、私より頭が悪いんだわ♡

 結局おにぎりはスキップしながら帰っていった、ウケる。
 もちろんよ、この私と一緒にデ!エ!ト!に行けるなんて世界で二番目に幸せだわ!

 1番はわ、た、し☆
 
 ……どうしよう、新しく買った服でも着ていこうかな。
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