おくれなば




「桜さん、ちょっといいですか」


午前の授業が終わってすぐ。

いつものように窓際に集まって友達とお弁当を食べに行こうとする前、梅ちゃんに呼び止められた。


「え、私?」

橘くんじゃなくて?と聞き返す隙もなく、梅ちゃんはすたすたと教室の出入り口へ向かって歩き出す。

ふと橘くんを見るも、教科書をまくらにして伏せているから、やっぱり呼ばれたのは私なのかと確信する。


急いで教室を出て梅ちゃんを追う。

売店に向かって走る生徒たち。
お弁当袋を片手に談笑しながら歩く生徒たち。
本とでっかい三角定規を抱えて職員室へ戻る先生。

昼休みの廊下は賑やかだなあ。

それに対して、なんだか機嫌が悪そうな後ろ姿。


私より少し背の低い梅ちゃんの後頭部を眺めながら、そんな些細なことを思う。


梅ちゃんが歩みを止めたのは、人気のない非常階段の扉の前だった。

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