おくれなば
「それは何の種?」
「ヒマワリです。発芽しやすいように一晩浸水しておきました」
「さすが、仕事が早い」
あなたのその無邪気な笑顔が見たかったからですよ、なんて口が裂けても言えないのですが……。
照れくさい感情を誤魔化すようにガーデニング手袋をはめ直します。
黙々とプランターへ土を入れて、等間隔に種をまく私たち。
「ヒマワリの花言葉は、『憧れ』です」
種に土をかぶせながら沈黙を破ると、橘くんがへえ、と相槌を打ちました。
「べにちゃんは、憧れの存在とかいる?」
「……そうですね、桜さん、でしょうか」
「え、なんで?」
橘くんがちら、とこちらを見た気配がしました。
私も橘くんをちら、と覗います。
「明るくて、誰とでも仲良くできて、太陽のように輝いて見えるからです」
その名の通り、誰からも愛される桜のような人。
「確かにずっと笑ってるよな、桜さんって」
桜さんのキラキラとした笑顔を思い出しているのか、眩しそうに目を細める橘くん。