おくれなば
「……あなたのためなんです」
思うように喉の力が働かず、それは蚊の鳴くような声でした。
「ん?」
「橘くんの喜ぶ顔が見たいからなんですっ……!」
勇気を振り絞ってやっと言えたセリフ。
でもあなたは、やはり、鈍感ですから。
「はは、嬉しい。ありがとう」
忖度ない笑みで華麗にかわすのです。
嗚呼、残酷だけど、愛おしい。
好きで好きでどうしようもなく、この空気が愛おしすぎて、震えてしまいます。
もし溢れる好きを伝えてしまったら。
もしお互いの心が交わらなかったら。
この空気は途端に息苦しいものになってしまうのでしょう。
そんな未来を想像すると、怖くて怖くて、
あと一歩、踏み出せないのです。
「よし、できた」
そう言ってパッと立ち上がった橘くん。
私も慌てて腰を上げます。
「私もできました。日当たりの良いところへ移動させましょう」
「外にしようか」
「はい」
プランターを持ち上げようと屈んだら、待って、と橘くんに呼び止められました。