おくれなば
「あれ、べにちゃんはそっち方向なの」
「あ、はい……」
せっかく二人で帰ろうと誘えたのに、まさかの逆方向でとてもとてもショックでした。
「もっと話したかったね」
「はい……残念です」
「あ、そうだ。じゃあさ、」
そう言ってズボンのポケットからスマホを取り出した橘くんは、それを私に差し出して。
「連絡先、交換しよ」
爽やかに告げたのです。
「は、はい……!」
急いで鞄からスマホを取り出し、橘くんのスマホに重ねます。
軽快な電子音が鳴って、双方の連絡先を受信し合いました。
「じゃあまたね。連絡するよ」
「ありがとうございます……!また明日、さようならっ」
こうして、別れを惜しむことなく手を振れる日が来るなんて、思ってもいませんでしたから。
嬉しくて嬉しくて、嗚呼、反対方向でむしろ良かったのかもしれない、なんて思っちゃいました。
今日の帰宅路の景色はいつにも増して、美しく色鮮やかでした。