おくれなば
校門の隅に咲くタンポポが視界に入り、立ち止まってしゃがみ、ふわふわの白い綿へふうっと息を吹きかけてあげます。
「こんなところに咲くなんて、タンポポは生命力が強いのかな」
そう言いながら橘くんも屈みます。
浮遊する綿毛たちを目で追っていたら、ひとつの春風に吹かれ、どこかへ見えなくなってしまいました。
「確かに根は生存力がありますが、花は開花してから数日、長くても1週間で萎んでしまうのですよ」
「えっ、そうなんだ」
「はい。それから一度自ら茎を折って倒れ、栄養補給して、綿毛に生まれ変わって、そして役目を終えたら枯れていきます」
「ずっと咲いてるように見えるのに、本当は短い寿命なんだね」
「はい」
私が立ち上がったら、橘くんもすっと立ち上がって歩き出します。
一緒に門をくぐって学校をあとにしたところで、お互い反対方向を向いてしまいました。