おくれなば

桜さんの明るい笑い声に巻き込まれる橘くん。

さりげないボディタッチに少し気を取られる橘くん。

どんどん桜さんのペースに呑まれていく橘くん。


だめ、だめ、橘くんを、桜さんの世界へ、連れてかないでください……!



「私も教えてください、橘くん」


教科書と筆箱を抱きしめて二人の間に無理やり入ります。

すごく、情けないと思いつつ、でも見ない聞かないふりなんてできず、居ても立ってもいられないのです。


「梅ちゃんも数学苦手なの?一緒だねーっ」


そんな私の狡智な立ち回りを知ってか知らずか、桜さんは痛くも痒くもない笑顔で、すんなり受け入れてしまいます。

その余裕がまた、彼女の魅力のひとつなのかもしれません。


これはとある日々のひとコマに過ぎなくて、私の知らないところでふたりは距離を縮めているのではないかという、漠然とした不安が常にあります。


その不安が、今日、さらに大きく膨らんでしまうなんて、考えもしませんでした。


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