恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
——コンコン

 遠くで扉をノックする音が聞こえる。でも私はまだ夢の中で、身体が思うように動かない。

「みのり、みのり」

 細く開いた扉の隙間から、廊下の明かりと要さんの声が入り込んできた。

「は、はい! すみません」

 ここがどこだったかを思い出し、私はハッと飛び起きる。

「謝る必要はない。そろそろ夕食の時間だから。それが――」

 要さんの言葉がそこで途切れた。何かを言い淀んでいる様子に、嫌な予感が胸をよぎる。

「何かあったんですか?」

「それが、スティーブンから連絡があってな。例のご夫妻に俺がロスにいることを伝えたら、これから一緒に食事をしようと言い出した」

「えっと……もしかして……」

「ああ。みのりも一緒だ」

 日本から来て、そのままスーツ姿で寝てしまった。案の定スーツにはシワができているし、化粧も落ちかけている。髪だってボサボサだ。このまま人前に出られる状態じゃない。

「あの、シャワーを浴びる時間は……?」

「残念ながら……」

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