恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 要さんをサポートする役のはずが、このままでは足を引っ張ってしまう。

「ちなみに、私が行かない選択肢は……」

「ない」

 即答だった。

「十分、いや五分でいいので、せめてこの髪だけでも直させてください」

「ああ、リビングで待っている」

 ドレスコードもわからないし、このままスーツで行くのが無難なはずだ。とにかくボサボサの髪だけは何とかしないといけない。私はパウダールームへ駆け込んだ。

「お待たせしました」

「行こう」

 なんとか、いつもの出勤時の姿までは戻っている。地味なのは変わらないが、さっきの寝起きの状態よりは幾分マシなはずだ。それでも、ビシッとスーツを着こなしている要さんに釣り合うとは思えない。

 本当は行きたくないが、秘書として副社長をサポートするために来ている。そう自分に言い聞かせる一方で、要さんの“嫁探し”の話を聞いた時から、胸の奥がずっとモヤモヤとしていた。

 尊敬を越えたこの気持ちに、私はもう薄々気づき始めている。でも必死に気づかない振りをしていた。

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