恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 私にとっての恋は、もう二度と触れたくないもの。その言葉だけで、胸の奥に鈍い痛みが走る。

「ふん……でも面白いじゃないか」

 ぼそりとつぶやくと、副社長はゆっくりと私の前へ歩み寄ってくる。

 一歩、また一歩と距離が縮まり――
 
 気づけば、息がかかるほどの至近距離で見つめ合っていた。

「な、何をするんですか!? 返してください!」

 言い終わる前に、伸びてきた手が私のメガネに触れて、外してしまう。

「なっ……!」

「その反応、失礼じゃないですか?」

 想像以上の反応に、思わず反論してしまった。

「……」

 副社長が目を見開き驚いて固まっている。そのままじっと見つめられて、値踏みするような視線が向けられた。

(そんなにひどい顔、してます……? 嫌な感じ……)

 けれど次の瞬間――

「ふっ、気に入った」

「はい?」

 耳元でボソッと囁かれた低い声に、背筋がぞくりと震える。妖艶な表情に、思わず身体が強張った。嫌な予感がして逃げようとしても、足が動かない。

 そのまま、副社長の顔がゆっくりと近づいてきて――

(キス……される……⁉)

 ぎゅっと目をつぶり、手を握りしめて、その場に固まってしまった。
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