恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
『時任様、お待たせいたしました』

 ソファに腰掛けて待っていると、スタッフに声を掛けられ、ゆっくりと視線を向ける。そこに立っていたのは、俺の想像を遥かに超える姿へと変身したみのりだった。

 メガネの奥に隠された素顔が美しいことは、もちろん知っている。だが、それをプロの技術によって余すことなく引き出された彼女は、まるで別人のような輝きを放っていた。

「あ、あの……」

 遠慮がちなみのりの声が耳に届き、ようやく俺は我に返る。

「やばい……想像以上だ。いや、最高だ」

 素直な感想が口をついて出た。戸惑うみのりに、これは明日のパーティーへ向けた準備だと説明する。もちろん、本番である明日のヘアセットやメイクも、このサロンに依頼済みだ。

 それだけではない。今回はドレスやバッグ、アクセサリーをはじめ、みのりの身の回りの物まで、一式すべて手配していた。

 これからは俺のパートナーとして、一緒に表舞台へ立ってもらうことになる。

 きっとみのりのことだから、「俺の隣に立つのに相応しい姿なのか」と、一人で悩んでしまうだろう。

 だからこそ、その不安や悩みは、先回りしてすべて取り除いておきたかった。

 ただ、一つの誤算——ホテルへ戻る途中も、ロビーへ足を踏み入れた瞬間も、周囲の男たちの視線が一斉にみのりへ集まっている。あまりにも綺麗になったみのりは、否応なく、その場にいる男たちの注目を浴びていた。

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