恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 ホテルの前からタクシーに乗り込むと、運転手に馴染みの店の名前を告げる。その店は看板すら掲げていない、知る人ぞ知るセレブ御用達のサロンだ。

 今日はここで、みのりを頭の先からつま先までトータルプロデュースしてもらう予約を入れている。

 元々スタイルは抜群だ。いつものメガネを外し、その下に隠された素顔を引き出せば、誰もが目を見張るほど美しく変身するはずだ。

 奥様がどんな表情で驚くのか、その瞬間を想像するだけで、明日のパーティーが待ち遠しくなってくる。

 戸惑いを隠せないみのりをプロのスタッフに預け、俺はひとまずサロンを後にした。

『スティーブン』

 ロスのオフィスへ顔を出すと、スティーブンがすぐにこちらへ歩み寄ってきた。

『カナメ、来てくれたのか? 彼女を一人にしていいのか?』

 みのりのことが気になるのか、開口一番に心配そうな声を掛けてくる。

『ああ。今は明日の準備をしてもらっている』

『奥様の無茶振りをどう切り抜けるのかと思っていたが、その表情を見る限り、勝算がありそうだな』

『ふっ、楽しみにしていてくれ』

 少し仕事の打ち合わせを済ませてから、俺は再びサロンへと戻った。

< 151 / 184 >

この作品をシェア

pagetop