恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 その様子を見守っていた人たちから、自然と安堵の拍手が沸き起こった。動揺していた奥様も、ご主人の無事を確認すると、ようやくホッと胸をなで下ろしている。

『皆さま、ご心配をお掛けいたしました。誠に申し訳ございません。どうか、このあとも私どものおもてなしを存分にお楽しみいただけますと幸いです』

 さすがと言うべきか。先ほどまで取り乱していたとは思えないほど、凛とした態度でお客さまたちへ挨拶をしている。

「みのり、ケガはないか?」

「はい、大丈夫です。それよりも、すみません!」

「ん?」

 緊急事態だったのは確かだ。それでも、せっかく用意していただいたばかりのドレスを汚してしまったことが、どうしても気になってしまう。

 私が謝ると、要さんは何を言われたのかわからないというような表情を浮かべた。

「ドレスです。新しいのに、汚してしまいました」

 足元へ視線を落とすと、ボルドーのドレスの裾には埃が付き、ところどころ黒く汚れが付着している。

「なんだ、そんなことか。それよりも、みのりにケガがなくて本当によかった。ありがとう」

「そんな……」

 ふと視線を上げると、ガラス窓に映った自分の姿が目に入った。そこには汚れたドレスだけではなく、せっかくきれいにセットしてもらった髪まで乱れた、少し情けない私の姿が映っている。


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