恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 ロスへ行く前まで、私は地味なメガネ姿だった。それが帰国した今は、メガネを外し、洗練された服装に身を包んでいるのだから、室長が驚くのも無理はない。

「変……ですか?」

 少し不安になって尋ねると、室長は穏やかに首を横へ振る。

「いえ、とてもお似合いですよ。これなら社内の女性たちも納得するでしょう」

 その言葉に、室長からは「やれやれ」とでも言いたげなため息が聞こえてきそうだった。

 空港の裏口から迎えの車へ乗り込んだ私たちは、そのまま本社へと向かう。本社に到着すると、正面玄関の前には大勢の報道陣が詰めかけていた。

——ガチャ

 車のドアが開いた瞬間、無数のフラッシュが一斉に私たちへ向けられる。

「時任副社長! 婚約報道は事実ですか!? ブラウン家と大きな取引が成立したと!」

「お隣の女性は婚約者の橋爪さんですか!?」

 次々と質問が飛び交うが、要さんは足を止めることなく歩き続ける。私もその隣に並び、無言のまま社内へと足を踏み入れた。

 しかし、ようやく人混みを抜けたと思ったのも束の間、今度は社内の社員たちの視線が一斉に私へと集まる。



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