恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
 日本に到着するまでの間、私たちは何度もキスを交わし、他愛もない会話を楽しんだ。

 空の上は、私たち二人だけのプライベートタイム。ただ隣にいるだけで幸せで、二人ならどんな困難でも乗り越えられる――そんな確信を胸に抱いていた。

 飛行機は予定どおりのフライト時間で日本に到着し、静かに空港へと着陸する。

「隅田が迎えに来ているはずだ」

 専用の到着ロビーへ向かい、入国手続きを終えると、そこには隅田と運転手が待っていた。

「ご苦労さん」

「お疲れさまです」

 室長は私たちの顔を見るなり、大きくため息をつく。

「はぁ……お二人とも、ずいぶん呑気ですね……」

 再会の挨拶より先に飛んできたのは、辛辣な一言だった。

「帰国早々、嫌味か?」

「嫌味も言いたくなりますよ! お二人のことで、社内だけでなく世間は大騒ぎになっていますから!」

「ええっ?」

 驚きの声を上げたのは私だけだった。要さんは、こうなることをある程度予想していたらしく、表情ひとつ変えない。

 そんな私たちを見比べながら、隅田はふっと目を細めた。

「それにしても橋爪さん。雰囲気が変わられましたね」


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