恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「おはようございます……」

「おはようございます。お疲れですか?」

「えっ、いえ! すみません」

 出勤早々に考えごとをしていて、室長に気を遣わせてしまった。

「本日十一時から、急ですが副社長に来客の予定が入りました。私がエントランスまでお出迎えに行きますので、ドリンクの準備をお願いできますか?」

「は、はい! ほかの予定については、こちらで連絡を入れておきます」

「よろしくお願いします」

 急な来客が入ることは珍しくない。けれど、室長自ら出迎えに行くほどなのだから、相当なVIP客なのだろう。

 午前中の予定は社内ミーティングが中心だったため、リスケジュールの調整もそれほど難しくはなかった。

 それでも、なぜか私は室長の表情が気になっている。

 何かを企んでいるような――そんな意味ありげな表情が、一瞬だけ垣間見えた気がしたのだ。

 室長の指示をすぐに仰げるよう、私は秘書室で仕事をすることにした。もちろん、周囲から向けられる視線は相変わらず冷たい。

――ガタンッ

 パソコンに向かって作業に集中していると、突然イスが大きな音を立てた。

< 71 / 184 >

この作品をシェア

pagetop