恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
——ガチャ

「お待たせしました」

 そう言いながら応接室へ入ってきた要さんに、その場にいた全員の視線が一斉に向けられる。その瞬間――

「お前っ! この前の!」

 貴明が勢いよく立ち上がり、要さんを指差した。苛立ちを隠そうともせず、ここがどこなのかも理解できていない様子だ。

「こらっ! 三上! お前は何をしているんだ! 時任副社長、申し訳ございません!」

 貴明以外の二人の男性は、どうやら要さんの正体を知っていたらしい。慌てて貴明を制止し、その無礼な態度を必死に取り繕おうとしている。

「課長? 今……副社長って……?」

「ああ。TOKITOグループの副社長だ。お前はそんな大事なことも知らなかったのか?」

「TOKITOグループの……まさか……」

 あまりの衝撃に頭が追いつかないのだろう。貴明は呆然としたまま、その場に立ち尽くしていた。

「TOKITOシステムで働いている三上くん。俺は見る目のない残念な男だったよな?」

 要さんが皮肉を込めた笑みを浮かべながら問いかける。

「そんな……嘘だろう?」

 貴明の顔からみるみる血の気が引いていった。

「三上、お前は副社長にそんな失礼なことを言ったのか?」

< 74 / 184 >

この作品をシェア

pagetop