恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
それはどのフロアへ行っても同じだった。
突然の副社長の来訪に、誰もが戸惑いを隠せず、その感情が表情にはっきりと表れている。私は要さんの後ろを歩きながら、苦笑いすることしかできなかった。
人事部、営業部、海外事業部、企画部……。私たちは各部署を順番に回っていく。
そして総務部のフロアへ辿り着いた時だった。
「きゃあ、要様!」
デスクの上に肘をつき、自分の指先のネイルを眺めていた女――高橋麗美が、黄色い声を上げた。
「ふ、副社長!」
そんな麗美とは対照的に、総務部長が慌てた様子で要さんのもとへ駆け寄る。
「ここの部署は、随分と余裕があるんだなぁ……」
「い、いえ、そんなことは……」
総務部長の顔が引きつる。
余裕があるのではない。ただ単に、仕事をしない人間が一人混じっているだけだ。
そのしわ寄せを受けながら真面目に働いている人たちのことを思うと、少し気の毒になる。
「要様ぁ……」
麗美はそんな緊迫した空気などまるで気付いていないのか、うっとりとした表情のまま駆け寄ってきた。
その瞬間、要さんの額にはピキッと音が聞こえてきそうなほど深いシワが刻まれる。
「た、高橋さん! すぐに席に戻りなさい!」
突然の副社長の来訪に、誰もが戸惑いを隠せず、その感情が表情にはっきりと表れている。私は要さんの後ろを歩きながら、苦笑いすることしかできなかった。
人事部、営業部、海外事業部、企画部……。私たちは各部署を順番に回っていく。
そして総務部のフロアへ辿り着いた時だった。
「きゃあ、要様!」
デスクの上に肘をつき、自分の指先のネイルを眺めていた女――高橋麗美が、黄色い声を上げた。
「ふ、副社長!」
そんな麗美とは対照的に、総務部長が慌てた様子で要さんのもとへ駆け寄る。
「ここの部署は、随分と余裕があるんだなぁ……」
「い、いえ、そんなことは……」
総務部長の顔が引きつる。
余裕があるのではない。ただ単に、仕事をしない人間が一人混じっているだけだ。
そのしわ寄せを受けながら真面目に働いている人たちのことを思うと、少し気の毒になる。
「要様ぁ……」
麗美はそんな緊迫した空気などまるで気付いていないのか、うっとりとした表情のまま駆け寄ってきた。
その瞬間、要さんの額にはピキッと音が聞こえてきそうなほど深いシワが刻まれる。
「た、高橋さん! すぐに席に戻りなさい!」