恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「専務……もうこれ以上、私を失望させないでくれ。とにかく娘は早急に自主退職させるんだ。君の処遇については、これからじっくり話し合おうじゃないか」

「しゃ、社長! 待ってください。娘のことはわかりました。ですが、私はこの職を失うわけにはいかないんです!」

 どこまでも傲慢だった専務の態度が、一瞬にして崩れ去る。だが、ここから先は私たちが口を挟む話ではない。

「田中社長、私たちはこれで失礼いたします。突然の面会にもかかわらず、お時間をいただきありがとうございました。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします」

 そう言って、要さんがソファから静かに立ち上がった。

「ああ、お見苦しいところをお見せしてしまいました。こちらこそ、これまでと変わらぬお付き合いをお願いします。今度はぜひ食事でもご一緒しましょう」

「はい。ありがとうございます」

 応接室を出ると、道井さんがエントランスまで見送ってくれた。

「ふぅ……」

 車へ乗り込んだ途端、要さんが大きく息を吐き出している。張り詰めていた空気から解放され、ようやく肩の力が抜けたようだった。


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