恋をしない秘書と恋に落ちた御曹司の甘くて危険な攻防戦
「副社長、ありがとうございました!」

「ああ、当然のことをしただけだ。あの女に絡まれて、災難だったな。すまない」

 要さんの責任ではない。実際、私が入社した当時、彼は海外にいたのだから。それでもなお、自分の立場が経営側である以上、こうしてきちんと謝罪の言葉を口にできるのだから、その姿勢にはやはり尊敬の念を抱いてしまう。

 『恋はいたしません』と自分で宣言したはずなのに、気づけばその感情は、ただの憧れや尊敬という枠の中で、静かに輪郭を強めていた。

 これは『恋』ではない——あくまで『尊敬』だと、私は何度も心の中で言い聞かせる。けれど、その言い訳のような自己確認すら、すでに気持ちの変化を否定しきれていないことの裏返しなのだと、どこかで分かっていた。

 

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