さっちゃんはオトコたらし。~スパダリ幼馴染の甘々調教からは逃げられない~

第6話 反則ワード

「うん……よく言われるよ。大学に入ってから、イメチェンしたんだ。さっちゃんは…元気にしてた?」

首を少し傾げて微笑みかける叶人くんの姿は

あまりにも眩しすぎて、直視することさえ恐れ多かった。

心臓の音がうるさすぎて、倒れてしまいそうだ。

けれど、その仕草の端々に

昔の彼の「優しさ」がそのまま残っているのが分かって、胸が痛いほどに締め付けられる。

「そう、だったんだ…うん、私は見ての通り、相変わらず元気にやってるよ!」

「…そっか。良かった」

叶人くんはそう言うと、私の顔をじっと見つめ

どこか熱を帯びた声でそっと言葉を繋いだ。

「───…綺麗になったね」

「えっ……?」

あまりにもストレートで、大人の色気を孕んだ褒め言葉に

私は完全に呆気にとられて硬直した。

耳の奥まで一気に熱が上っていくのがわかる。

あの泣き虫だった彼が、こんな台詞を躊躇いもなく口にするようになるなんて。

そのときだった。

「ちょっとちょっと!宇佐田さん、黒崎さんと知り合いなの!?」

「え?あ、はい」

「マジで!?どこ繋がり!?」

様子を伺っていた周囲の女性陣から、黄色い悲鳴混じりの驚愕の声が一斉に上がった。

オフィスのざわめきは瞬く間に広がり、完全に野次馬の嵐と化す。

「え、えっと…」

「どういう関係なのよー!?」

矢継ぎ早に飛んでくる質問に

私は叶人くんの社内での立場や、これからの仕事に悪影響が出ないよう、大慌てで両手を振って否定した。

「ち、違います!ただの、小学生の頃からの幼馴染です……!ね?黒崎くん!」

助けを求めるように彼を見上げると、叶人くんは一瞬だけ

寂しそうに目を細めたような気がした。

けど、すぐに彼は周囲の女子たちに向かって

困ったような完璧な営業スマイルを浮かべて頷いた。

「はい。宇佐田さんの言う通り、俺たちはただの幼馴染ですから」

私の言葉を肯定しただけに過ぎないが

なぜか少しだけ意味深に聞こえたのは、私の気のせいだろうか。

周りの女子たちは、その言葉にホッとしたような表情を浮かべ

「なーんだ、ただの幼馴染かぁ。びっくりした〜!」

「そっかそっか、良かった!」

と口々に言い合いながら、安心した様子で自分たちの席へと戻っていった。

嵐のような時間が過ぎ去り、彼もまた上司に呼ばれてデスクへと移動していく。

残された私は、未だに激しく波打つ鼓動を抑えるようにして、そっと胸に手を当てた。

(ただの、幼馴染……)

口ではそう言ったものの

私の視線は、どうしても彼の広い背中を追いかけてしまう。

引き出しの奥底に仕舞ったはずの私の初恋が

10年の歳月を経て

以前よりも魅力的になった彼の手によって今、乱暴にこじ開けられようとしていた。
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