さっちゃんはオトコたらし。~スパダリ幼馴染の甘々調教からは逃げられない~

第5話 数年ぶりの再会

噂の通り、艶のある黒髪はスマートにセットされ、大人の色気を漂わせている。

シャープで彫刻のように美しい顎のライン。

すっと天に向かって通った高い鼻筋。

かつての、あの優しくて儚げだった面影をかすかに残しながらも

それを遥かに凌駕するほどに洗練され、圧倒的な容姿の男が、そこに立っていた。

黒崎、叶人。

彼は丁寧かつスマートに頭を下げると、ゆっくりと顔を上げ、部署内をぐるりと見回した。

そして、私のデスクの前でその視線がピタリと止まり

彼の美しい切れ味のある瞳が、驚きに細められた。

「……さっちゃん?」

その一言が溢れた瞬間、オフィスの空気が一変したのが肌で分かった。

周囲の女子たちの視線が、一斉に私へと突き刺さる。

彼は一切の迷いのない足取りで、まっすぐに私の席へと近づいてきた。

一歩、一歩と近づいてくるたびに

彼から放たれる洗練された大人の男の香水の香りと、圧倒的なオーラが私を支配していく。

彼は私のデスクの前で立ち止まり、驚きと

それから底知れない懐かしさが混ざり合った、酷く優しい表情で私を見下ろした。

「宇佐田、桜……だよね?」

時間が止まったような感覚に陥り、頭の中は真っ白になった。

目の前に立つこの、全女子の視線を釘付けにしている高身長のイケメンは

本当にあの、私の服の裾を掴んで泣いていた黒崎叶人くんなんだろうか?

信じられないという気持ちと、あの日仕舞い込んだはずの淡い恋心が

数千倍の鼓動となって胸の奥で暴れ始める。

混乱の極地に達した脳は、適切な言葉を完全に失い

私はただ、見上げるほど高くなった彼を凝視することしかできなかった。

周囲の社員たちも、新しく来たエースがいきなり地味な私に話しかけたという異常事態に

興味津々の様子でざわざわと騒ぎ始めている。

しかし叶人くんは、そんな周囲の喧騒など目に入っていないかのように

ただ私だけを真っ直ぐに見つめ、口元を穏やかに緩めた。

「久しぶりだね。まさか、こんなところでまた会えるなんて思わなかった」

その低い声には、記憶の底にある

あの優しくて温かい彼の温もりが確かに宿っていた。

その響きが、目の前の完璧な男と、私の知る幼馴染の少年を完全に結びつける。

「ほ、ほっ、本当に…あの、叶人くんなの…?すごく……その、雰囲気が変わってるから、びっくりして」

声を出すだけで精一杯だった。

どうしても声が上ずってしまう。

十年ぶりの再会。

それがまさか、同じ会社で、しかも同じ部署の同僚として訪れるなんて

どんな確率なのだろう。

彼は悪戯っぽくクスッと笑うと、昔と変わらない、少し困ったような優しい声音で囁いた。
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