待てない、夏!

第10話 5年越しの恋

OB会がお開きになった。

「お疲れ様でした〜」

「気を付けて〜」

あちこちで
別れの挨拶が飛び交う。

私は
陸先輩を探した。

先輩は、
矢部先生と話をしていた。

こういう所も、
律儀で
先輩らしい。

先生を見送ると、

先輩が
辺りを見回した。

キョロキョロしてる。

探してる?

もしかして――

私?

「陸先輩!」

陸部の応援並みに
大きな声が出た。

先輩が振り向く。

そして、

私に向かって

手を上げた。

向かってくる。

私の方へ。

私の所へ――

来た。



由夏…。

陸先輩が私を見た。

なんだろう。

さっきまでと違う。

先輩も緊張している。

ふぅーっと
深呼吸をして、

もう一度
私の名前を呼んだ。

「由夏」

「はい」

「ヤバいな」

先輩が笑う。

「俺の方が、緊張してる」

思わず私も笑った。

「じゃあ、
私から言ってもいいですか?」

そう言うと、

先輩は首を横に振った。

「それはダメ」

そして、
真っ直ぐ私を見る。

「俺から言わせて」

「由夏」

先輩の声が
少し震えていた。

「五年前から」

一度言葉を切る。

「いや」

先輩は笑った。

「もっと前からかもしれない」

そして、

「ずっと好きだった」

「言えなくて…ごめん」

胸がいっぱいになる。

嬉しいのに、

信じられない。

夢じゃないよね。

そして今度は、私。

大きく息を吸う。

「陸先輩」

先輩が優しく私を見る。

「私も」

それだけで
涙が出そうになった。

「私も、五年前から好きでした」

首を横に振る。

違う。

それだけじゃない。

「先輩が、ゴールで
待っていてくれたことも」

「お疲れって
言ってくれたことも」

「鉢巻きを
受け取ってくれたことも」

「全部、
ちゃんと覚えてます」

声が震える。

でも、

今なら言える。

「私、五年前よりもっと前から」

「ずっと」

「ずっと」

先輩を見る。

「陸先輩が好きです」

言えた。

やっと。

先輩が
少し目を細めて笑う。

私も笑った。

気付けば、涙まで出ていた。

「五年もさ」

先輩が苦笑する。

「俺たち、
何してたんだろうな」

「本当ですよ」

二人で笑った。

そして、

先輩が
そっと手を差し出す。

握る。

温かい。

ずっと憧れていた人の手。

「もう離さないからな」

「はい」

夜風が
気持ちよかった。

駅までの道を

二人で歩く。

「そういえば」

先輩が笑う。

「佐野に報告する?」

「しなくていいです!」

即答した私に、

先輩が吹き出した。

私も笑う。

きっと今年の夏は、

忘れられない夏になる。

うん。

ちょっと、

待ちきれないかも。




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