俺様鉄面皮上司が偽装彼氏になりまして。
ちら、と目配せをして、機敏に立ち上がり、コーヒーをふたつ取りに行ってくれる。
その高い位置にある細い腰がどう動くのかを知っている。
どんな恍惚の表情で果てるのかを知っている。
あたしだけの上司。世界にたったひとり、あたしを追い求めて愛しぬく、唯一無二の男。
上司の姿が消えるとあたしは息を吐いた。Windows2000のSPは馬鹿重くてアップデートに異様に時間がかかる。
ふたりきりでマンションで過ごす時間もいいけれど、……こうして静かなオフィスに、本当は溺愛しまくり! なのに、すました顔で上司と部下を演じ切る関係性も、悪くはない。
ふふふ。……今夜帰ったらなにをしようかなぁ。
あれや、……これや。
ぶぶぶ、と携帯の振動音。この頃はまだガラケーことガラパゴス携帯が主流なので、会社に携帯電話はおろか、USBでさえも持ち込める時代であった。USBを悪用したセキュリティ事故の連発、個人情報の流出にどんな企業もしくしくVaundyのごとく泣かされた。
袖机の隣に置いたkate spadeのショルダーバッグのなかの携帯電話を引っ掴んで開いてみれば、
「……ふっ」
たまらず笑った。