敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 彼女はいつものように応接セットのソファーへ腰を下ろすと、長い脚を優雅に組んだ。

「先日のレセプションパーティー、大盛況だったわね」
「その節はお世話になりました。篠部社長にもよろしくお伝えください」

 ガラステーブルを挟んだ対面の位置に座ったあと、俺はていねいに頭を下げた。
 媚びているわけではなく、俺はビジネスの関係として毎回きちんと線を引いているのだ。

「ところで、陽咲さんは大丈夫だった? 突然気分が悪いって言ってトイレへ駆け込んでいったから」
「ご心配をおかけしてすみません。もう大丈夫です」
「パーティーに連れてきたの、間違いだったんじゃない? 彼女には務まらないわ」

 弘花さんが小馬鹿にするようにフッと鼻で笑った。パーティーでの陽咲の弱弱しい姿を脳裏に浮かべているのだろう。
 その薄笑いには、見下すような嘲笑の色が表れている。

「務まらない、とは?」
「あなたの妻として、よ。だって、私たちとは住んでる世界が違うもの」
「そうは思っていません」

 俺のはっきりとした声が静かな室内に響いた。ビジネス用の穏やかな笑みを完全に消し去り、彼女の言い分を認めないという拒絶の意志を、真っすぐな視線にのせて突き返す。

「陽咲に、今みたいなことを言ったんですか?」

 自分でも驚くほどの、地を這うような低い声が出て、場の空気が一気に凍りついた。
 抱いていた疑念が今、彼女の言動によって確信へと変わっていく。
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