敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 どうやらこちらは低層階用とは別の、高層階住人専用の高速エレベーターらしい。
 扉が閉まって動き出すと、ふわりと身体が浮く感覚になり、耳の奥でわずかに気圧の変化を感じた。彼の部屋がある四十五階まで、あっという間だ。

「どうぞ」

 彼が玄関扉に鍵を差し込み、ドアを開けて私をいざなう。
 中へ一歩入ると、漆黒の大理石の床が広がっていた。玄関土間は床の素材が切り替わっているだけのフラットなつくりになっている。
 靴は一足も出ていなくて、ここは本当に玄関なのかとキョロキョロしてしまった。

「上がって」
「お、お邪魔します」

 履いていたスニーカーを脱いだものの、それをどこに置けばいいのかわからず立ち尽くしていた。
 彼が壁の一部に軽く触れる。すると音もなく扉がスライドし、整然と並ぶ靴のコレクションが現れた。
 ただの壁だと思っていたそこは、シューズインクローゼットだったのだ。
 取っ手すら目立たない設計になっているなんて……。私は圧倒されて言葉も出ない。

「そんなに緊張しなくていいから」
「すみません。靴、ここに置かせてもらいます」

 一番手前の隅にスニーカーをちょこんと置いたけれど、まるで異物が紛れ込んだみたいに浮いていた。
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