敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 いつの間にかスリッパが用意されていたので、ありがたく使わせてもらう。

「ちなみにこっちはコートクローク。滅多にないけど、もし来客があったらここにコートを預かっておける」
「こんなの……初めて見ました」

 シューズインクローゼットの隣の扉を開けたそこに洋服はなく、ハンガーだけがかかっている。
 コートクロークがある家なんて、私はこれまで一度も見たことがない。我が家との違いを実感して、眩暈がしてきそうだ。

 彼に促されるまま、リビングへと続く扉を抜けた。
 するとそこは玄関とは打って変わり、やわらかい色の照明が注がれた空間だった。
 部屋の中央には、茶色のレザーソファーが置かれている。とても高級そうだけれど、色目が優しくて、広大なリビングに〝温もり〟を添えていた。

「適当に座って。ていうか……どうかした?」
「いいえ。想定以上にお部屋がゴージャスで、とまどってしまっただけです。もう喉がカラカラ」

 愛想笑いをしながら正直な感想を口にして、おそるおそるソファーに腰を下ろした。上質な革の質感は座り心地抜群で、下に敷かれた毛足の長いベージュのラグともマッチしている。

 よく考えたら、京極さんはアークラディアのCEOなのだ。私が今まで知らなかっただけ。だから、こんなふうにセレブな生活を送っていたとしても、なんら不思議はない。
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