敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています
 フンッと弘花さんが鼻で笑った。哀れむような薄笑いを浮かべていて、その目は完全に私を見下している。格の違いを見せつけるような、あきらかな挑発だ。

「不釣り合いなのは……わかっています」
「だったら早く別れなさいよ」

 周囲に聞こえないよう、弘花さんがわずかに距離を詰めてくる。威圧感のある低い声が耳に届いた途端、背中に冷たいものが走った。

「なにかワケありなのは想像がつくわ。だって、彼があなたなんか選ぶはずないものね」

 図星を突かれ、身体がビクンと大きく跳ね上がる。偽装結婚だと見抜かれたのかもしれない。そう考えたら、全身の血の気が一気に引いていくのがわかった。

「御曹司に見初められたと勘違いしたの? 無理もないけど、あなたは私たちとは違う世界の人間なのよ」

 弘花さんの言うとおりだ。会場内を見回せば、まばゆいドレスや高級なスーツに身を包んだ人ばかり。
 自分のような地味な書店員は、ここにいていい人間じゃない。碧人さんの妻のふりをするなんて、無理があったのだ。
 圧倒的な格差と孤独感が、私の心を容赦なく打ちのめしていく。

「恥ずかしいと思わないの? その顔、ちゃんとメイクした?」
「薄いですけど、一応してます」
「それに、なにこのドレス。アクセサリーは控えめなネックレスだけ?」

 言うが早いか、彼女は品定めするように私のドレスの袖を指先でつまみ、不躾に引っ張った。
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