空に吹く、風の音を教えて。
プロローグ
「今年こそ、彼女が出来ますように!!」


私の薄い鼓膜を貫いたのは、変声期を越えたばかりの少し幼さの残る少し低い声だった。

初夏の爽やかな風に吹かれ、そよそよと境内の木々が揺れる。

バツが悪くなり、聞かなかったことにして帰ろうと踵を返そうとした、その時。


「あ…」


参拝を終え、振り向いた彼と目が合った。


「え…」


気づいたら口から一言溢れていた。

もしかして…。

背筋を冷や汗がなぞる。

でも、なんだか。

この感じ。

覚えてる。

私は一瞬の躊躇いを捨てて口を開いた。


「浅羽、昊透…くん?」

「…あ、うん。そっちは…」


私は少し目を伏せた。

薄汚れたスニーカーの爪先を見つめながら、答えてあげる。


「保泉、風花。…覚えてる?」



彼は首を縦に振った。


風が湿度を帯びて少し肌にベタつく。

夏が始まったんだ。

そう気づいた。
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