空に吹く、風の音を教えて。
アニメイトで用を済ませ、2時間ほどカラオケ屋に滞在し、私たちは早めに帰ることになった。
というのも18時から真星学園組は塾の夏期講習があるから。
偏差値48の、中の下の高校に通う私には無縁の話過ぎて、住む世界が違いすぎるとしか思えない。
ここまで差が明確だと社会の縮図の学習だと思えて惨めとも感じない。
みんな賢いのに驕り高ぶることなく優しいから、私たちを改札前まで見送ってくれた。
「あ、そうだ!SNS交換しよ!」
光莉ちゃんの鶴の一声にみんながすかさずスマホを取り出して交換し合う。
「えっと、グループ名何にしようか?」
「ボーイミーツガールイン池袋!で、どう?」
「長過ぎじゃない?」
愛しの人にツッコまれアタフタする光莉ちゃん。
「略してBMGIでどうですか、先輩方?」
颯太が今日初めて下手に出る。
これ以上株を落とすわけにはいかないからね。
「うん、いいと思う」
「オッケー」
「俺も賛成」
みんなが口々に言い、グループ名が決まった。
…と思ったら、
「保泉さんは?いい?」
浅羽くんに問いかけられた。
「あ、うん」
反射的に答えた。
真っ直ぐ私の目を見てた。
答えなよって、言われてるみたいで。
胸がキュッと苦しくなった。
それに、名前…。
保泉さん、か。
「今日は楽しかったよ。また、定期的に会おうね」
「うんっ!まったね〜!バイバーイ!」
月雲くんに見送られ、ニッコニコになりそのまま光莉ちゃんはスキップしながらホームへと向かっていく。
「あっ!ちょっと待ってよ、みつりん!」
颯太も後を追う。
こうなるのはもう恒例だから私はのんびり行かせてもらう。
「今日はありがとう。夏期講習、頑張ってね」
そう言って踵を返した。
また、なんて言わない。
このまま、終わり。
終わり、だから。
ぐっと歯を食いしばった。
あの日も同じことをしていた。
唇がだんだん痛くなって来て、しばらくすると鉄の味がしてくる。
口の中に広がってやっと力を入れ過ぎていたことに気づくんだ。
私はほんと、鈍いから。
気づくのが、遅いんだ。
「風ちん!電車来てる!早く早く!」
「風花!走って!」
前を行く2人の背を目指して走る。
「2番ホーム、ドアを閉めます」
「あっ!やば…」
3、2、1…
「風ちんっ!」
光莉ちゃんの声が鼓膜を震わせて、
シナプスから信号が送られた。
…行っちゃ、ダメ。
ーープシューっ。
目の前でドアが閉まった。
口の形で私の名を呼んでるのが分かる。
私は2人に手を振った。
2人きりにしてあげよう。
咄嗟にそう思ったんだ。
1本遅れたからってど田舎ではないからそんな大差ないし、大丈夫だもん。
「…はぁ」
ため息が漏れた。
朝と同じ湿度の重い重いため息。
結局、聞けず仕舞いだった。
いや、聞かなかったんだ。
…見たくないこと、見えちゃったな。
私…
怖がりなんだ。
弱虫なんだ。
意気地なしなんだ。
鈍感なんじゃなくて、
自分から感じることをシャットアウトしてる。
そうすることで傷つくことから逃げられるようにしてるんだ。
「私…ヤなやつ、だな」
ーーブーブー。
スマホが鳴る。
きっと光莉ちゃんか颯太からだろう。
先帰っててって言うか。
なんて考えていたのに、
画面に現れたのは…
昊…くん。
ーー今日はありがと。またな。
既読。
数秒して、またメッセージが来て。
ーー会えて嬉しかった。
ーー今度、ちゃんと話がしたい。
ーーいつ会える?
既読をつけて、
私は閉じた。
もう、会わないよ。
壊れて止まった時計の針が2度と動かないのと一緒。
私は無理に動かしたりしない。
ずっと、このまま。
このままがいいから。
「まもなく2番ホームに電車が参ります」
電車が近づいて来て、
一度止まって。
ドアが開いて乗ってた人が降りて、
再びドアが閉まるまでに私が乗る。
閉まったドアをこじ開けたりしない。
出発したら目的地まで乗ったまま。
降りないよ。
降りないのが正解だって、
知ってるから。
何度だって
何度だって
それを繰り返す。
「…さよ、なら」
小さくそう呟いた。
というのも18時から真星学園組は塾の夏期講習があるから。
偏差値48の、中の下の高校に通う私には無縁の話過ぎて、住む世界が違いすぎるとしか思えない。
ここまで差が明確だと社会の縮図の学習だと思えて惨めとも感じない。
みんな賢いのに驕り高ぶることなく優しいから、私たちを改札前まで見送ってくれた。
「あ、そうだ!SNS交換しよ!」
光莉ちゃんの鶴の一声にみんながすかさずスマホを取り出して交換し合う。
「えっと、グループ名何にしようか?」
「ボーイミーツガールイン池袋!で、どう?」
「長過ぎじゃない?」
愛しの人にツッコまれアタフタする光莉ちゃん。
「略してBMGIでどうですか、先輩方?」
颯太が今日初めて下手に出る。
これ以上株を落とすわけにはいかないからね。
「うん、いいと思う」
「オッケー」
「俺も賛成」
みんなが口々に言い、グループ名が決まった。
…と思ったら、
「保泉さんは?いい?」
浅羽くんに問いかけられた。
「あ、うん」
反射的に答えた。
真っ直ぐ私の目を見てた。
答えなよって、言われてるみたいで。
胸がキュッと苦しくなった。
それに、名前…。
保泉さん、か。
「今日は楽しかったよ。また、定期的に会おうね」
「うんっ!まったね〜!バイバーイ!」
月雲くんに見送られ、ニッコニコになりそのまま光莉ちゃんはスキップしながらホームへと向かっていく。
「あっ!ちょっと待ってよ、みつりん!」
颯太も後を追う。
こうなるのはもう恒例だから私はのんびり行かせてもらう。
「今日はありがとう。夏期講習、頑張ってね」
そう言って踵を返した。
また、なんて言わない。
このまま、終わり。
終わり、だから。
ぐっと歯を食いしばった。
あの日も同じことをしていた。
唇がだんだん痛くなって来て、しばらくすると鉄の味がしてくる。
口の中に広がってやっと力を入れ過ぎていたことに気づくんだ。
私はほんと、鈍いから。
気づくのが、遅いんだ。
「風ちん!電車来てる!早く早く!」
「風花!走って!」
前を行く2人の背を目指して走る。
「2番ホーム、ドアを閉めます」
「あっ!やば…」
3、2、1…
「風ちんっ!」
光莉ちゃんの声が鼓膜を震わせて、
シナプスから信号が送られた。
…行っちゃ、ダメ。
ーープシューっ。
目の前でドアが閉まった。
口の形で私の名を呼んでるのが分かる。
私は2人に手を振った。
2人きりにしてあげよう。
咄嗟にそう思ったんだ。
1本遅れたからってど田舎ではないからそんな大差ないし、大丈夫だもん。
「…はぁ」
ため息が漏れた。
朝と同じ湿度の重い重いため息。
結局、聞けず仕舞いだった。
いや、聞かなかったんだ。
…見たくないこと、見えちゃったな。
私…
怖がりなんだ。
弱虫なんだ。
意気地なしなんだ。
鈍感なんじゃなくて、
自分から感じることをシャットアウトしてる。
そうすることで傷つくことから逃げられるようにしてるんだ。
「私…ヤなやつ、だな」
ーーブーブー。
スマホが鳴る。
きっと光莉ちゃんか颯太からだろう。
先帰っててって言うか。
なんて考えていたのに、
画面に現れたのは…
昊…くん。
ーー今日はありがと。またな。
既読。
数秒して、またメッセージが来て。
ーー会えて嬉しかった。
ーー今度、ちゃんと話がしたい。
ーーいつ会える?
既読をつけて、
私は閉じた。
もう、会わないよ。
壊れて止まった時計の針が2度と動かないのと一緒。
私は無理に動かしたりしない。
ずっと、このまま。
このままがいいから。
「まもなく2番ホームに電車が参ります」
電車が近づいて来て、
一度止まって。
ドアが開いて乗ってた人が降りて、
再びドアが閉まるまでに私が乗る。
閉まったドアをこじ開けたりしない。
出発したら目的地まで乗ったまま。
降りないよ。
降りないのが正解だって、
知ってるから。
何度だって
何度だって
それを繰り返す。
「…さよ、なら」
小さくそう呟いた。