空に吹く、風の音を教えて。
「誰捜してんの?」


背後で声がしたのにピクってなって、

でも真っ直ぐ前を見つめていると、

水槽に姿が映った。

私の右隣。

私より頭1個分くらい大きい彼が並んだ。


「…」

「……」

「…あ、エイ」


彼が私に近づいて来たエイを指差した。


「良かった…。来てくれた」


私がそう呟くと彼…浅羽くんはぎこちなく微笑んだ。

…あ。

そう、なるんだ。

なら、

じゃあ、

忘れたわけじゃなかったんだ。

あの日の、約束。


「エイ、好きなの?」

「まぁ、うん。ほとんど初めまして、だけど」


そこで会話が途切れる。

胃がシクシクするほどに張り詰めた空気。

なんか言わなきゃ。

なんか、

なんか、

なんか…!

って、思えば思うほど、

頭が真っ白になっていく。

聞きたい気もする。

聞かなきゃならない、気がする。

けど、

けどね、

……。

きっと、

たぶん、

私は…

怖い、

んだと思う。

あの日で止まった時計を動かすことが、

真実を突きつけられることが、

それを受け止めなきゃならないことが、

怖いんだ。

…やっと、

やっと、今少し、

少しだけ、見えたよ。

自分の気持ち。


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