空に吹く、風の音を教えて。
19時、校門前。

その予定時刻までずっと気が気ではなかった。

和実ちゃんと月雲くんと合流してからの記憶がほとんど抜け落ちてしまうほどに。

お化け屋敷に行ったけど光莉ちゃんの悲鳴が耳をつんざくほどだったことしか覚えてない。

おばけが怖いってことよりこれから何を言われるんだろうとか、

私はちゃんと話せるだけのメンタルを維持できるのかなとか、

まだ起きてもいないことに不安が募りすぎてこのまま昇天してしまうんじゃないかと本気で思っていた。


「おーい、風ちーん!だいじょぶ?」

「ほえ?あ、うん。大丈夫大丈夫」


茜色に染まった光莉ちゃんがじっと私を見つめてくる。

絶対怪しまれてるよね。

っていうか、光莉ちゃんくらいには言っておいたほうがいいか。

そう思い、口を開こうとしたのだけれど。


「これから都内のカラオケで一発歌ってから帰ろってそーちゃんと話してたんだけど、風ちんはどうする?」


察しのいい光莉ちゃんが先手を打った。

腕時計を見る。

時刻は17時半。

今頃ホールでは文化祭の閉会式が行われ、ミスコングランプリとか、最優秀企画賞とか発表されているんだろうな。

ひゅーっと風が吹く。

頬を撫でる風はあの夏の日より少し冷たくなった。

私は深呼吸をひとつしてから、口を開いた。


「ごめん。私約束があるんだ。だからいけない」


私がそう言うと光莉ちゃんはにっこりとほほ笑んだ。


「まあ、そうだよねぇ。昼間のあれ、絶対風ちん宛てだったもん。…終わってなかったんだね、まだ」

「うん。だから、ちゃんと向き合って、終わらせてくる」


小5のあの日で凍り付いたままの記憶と気持ちを溶かして昇華するために、私は行くって決めた。


「じゃあ、ギター野郎2人お預かりしまーす!」

「別に私のものじゃないんだけど」


そんなツッコミは光莉ちゃんには聞こえていない。

二人をSPのようにわきに抱え、あばよ!と言って行ってしまった。

何か言いたげそうにこっちを振り返った弥代くんの憂いを帯びた眼差しが脳裏に焼き付いた。

木枯らしが吹く。

心なしかさっきより冷たい気がする。

みんないなくなってひとりぼっち。

ここからあと1時間半もある。

保護者の待機スペースみたいなところがまだ空いていたはずだから、ひとまずそこに避難して放心しているしかない。

これからのことは何も考えず、

ただゆっくりすぎる時の流れを恨めしく思うことだけに注力して、

私は時をやり過ごすことにした。

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