空に吹く、風の音を教えて。
「すみません。もう施錠する時間なので…」

「ふえ?あ、すみません」


気づいたら寝落ちしていたらしい。

一緒にいたはずの保護者10人余りも誰一人いなくなっていた。

慌てて退出して校門へと向かう。

締め出しを食らったということは、19時になってしまったということ。

緊張してたはずなのにのんきに居眠りしてて遅れたなんてなったら気まずすぎる。

もうこれ以上迷惑かけないって誓ったばかりなのに。

全力ダッシュをし、校門にたどり着く。


「よかった…まだ、いない」


と安心し、ふうーっと大きなため息をついたその時。


「ほずみん、見っけ」


ほずみん…。

そんな風に呼ぶのは、


「浅羽くん…」


君しかいないよ。


「ほんと、きてくれて良かった。ここじゃあれだし、近くに公園あるから移動していい?」


私はこっくりと頷いた。


「じゃ…行こっか」


私は浅羽くんの後ろを着いていった。

隣に並ぶ勇気なんてないし、並んだとて何を話せば良いか分からない。

お互いに無言のまま公園に到着した。

思っていたより大きめの公園でベンチが至るところにあり、会社帰りのサラリーマンや大学生くらいのカップルも腰を下ろしていた。


「あ!あそこ空いてる!ほずみんはあそこのベンチで待ってて。俺飲み物買ってくるから」

「あ、うん」


さりげなく気遣ってくれる浅羽くん。

やっぱり優しい。

あの頃も今みたいにいろんな子に手を差し伸べてくれてたんだよね。

なんてまた過去を振り返っていると浅羽くんが小走りでやって来た。


「お待たせ。お茶とミルクティーどっちがいい?」

「じゃあ、ミルクティーで。ありがとう」

「どういたしまして」


言いながら浅羽くんは私の隣に腰を下ろした。

人1人分くらいの距離が空けられている。

この距離が今の私と浅羽くんの距離、なんだ。

目で見て実感が湧いた。

そして、お互い沈黙してしまう。

3回くらい横断歩道の音を聞いてから、ようやく2人を取り巻く空気が震えた。


「あのさ、ほずみん。その…今まで、ごめん」

「あ、あの…それなら私も、ごめん。既読スルーしちゃって」


お互いに謝ってから顔を見合わせ、どちらからともなく目を逸らす。

俯いたまま浅羽くんは続ける。


「俺が転校する前の日、あの日実はさ…」


浅羽くんの話を聞いて私もあの日を思い出す。

忘れもしない、あの日。

君が私の前からいなくなった、あの日。



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