紫陽花の短編集物語#5

私だけ知らなかった恋の結末

私だけ知らなかった恋の結末① きっと私のことが好き
放課後・教室
莉子「ねえ瑛太、今日も一緒に帰る?」
瑛太「え、あ、うん」
莉子(やっぱり。断らないし、目もよく合うし)
真帆「莉子さ〜、最近機嫌よくない?」
莉子「わかる? だってさ、瑛太がさ」
真帆「はいはい、また始まった」
莉子「絶対私のこと好きだと思うんだよね」
(少し離れた席で、瑛太が誰かを見る)
莉子(……今の、私の方見てたよね?)

私だけ知らなかった恋の結末② 勘違いのサイン
通学路
瑛太「昨日のノート、ありがとう」
莉子「全然! 気にしないで」
莉子(やさしいし、ちゃんと覚えてくれてる)
真帆「それで付き合ってないのが不思議なんだけど」
莉子「今は、その前段階ってやつ?」
栞(前を歩いていたが、振り返り)「おはよう」
瑛太(声のトーンが少し変わって)「あ、おはよう」
莉子(……気のせい、だよね)

私だけ知らなかった恋の結末③ 視線の理由
昼休み・中庭
莉子「ねえ瑛太、今日放課後ひま?」
瑛太「ごめん、今日はちょっと…」
莉子「そっか、了解!」
莉子(断られても、嫌な感じじゃなかったし)
真帆「最近さ、瑛太くん、誰か探してる感じしない?」
莉子「え?」
真帆「目で追ってるっていうか」
莉子「……それ、私のことじゃない?」
真帆「自信すご」
(その瞬間、瑛太の視線の先に“栞”)
莉子(……あれ?)
私だけ知らなかった恋の結末④ 違和感の正体
放課後・校舎前
莉子「瑛太、さっき誰見てたの?」
瑛太「え?」
莉子「中庭で」
瑛太「あ……いや、別に」
(少し間)
莉子「そっか」
莉子(なんで今、胸がざわっとしたんだろ)

少し離れた場所
栞「……瑛太くん」
瑛太「……栞」
(短い沈黙)
瑛太「今日、ちゃんと話せてよかった」
遠くからそれを見ている莉子
莉子(今の、何……?)




私だけ知らなかった恋の結末⑤ 広がる噂
昼休み・教室
真帆「ねえ莉子、聞いた?」
莉子「なに?」
真帆「瑛太くんさ、好きな人いるらしいよ」
莉子「……え?」
真帆「クラスの子が言ってた」
莉子「誰の勘違いじゃない?」
真帆「さあ。でも結構本気っぽかった」
(教室の向こうで瑛太が誰かと話している)
莉子(好きな人……いる?)




私だけ知らなかった恋の結末⑥ 名前を知った日
放課後・廊下
真帆「そういえばさ」
莉子「うん?」
真帆「前、瑛太くんに好きな人がいるって言ったけど、誰か知ってる?」
莉子「……知らない」
真帆「栞ちゃんなんだって」
莉子「……え?」
真帆「佐藤栞ちゃん」
(莉子、立ち止まる)
真帆「知らなかった? 結構有名みたいだよ」
(少し離れた場所の瑛太を見る。瑛太の視線の先には、栞)
莉子(……あ)








私だけ知らなかった恋の結末⑦ 勘違いだった気持ち
夕方・帰り道
真帆「莉子、大丈夫?」
莉子「うん……たぶん」
莉子「私さ、ずっと勘違いしてたんだね」
真帆「……そうだね。ごめん、私、莉子が勘違いしてるかもって思ってたんだけど—」
莉子「優しかったのも、話してくれたのも」
真帆「うん」
莉子「全部、私だけ特別だって思ってた」
(少し沈黙)
真帆「でもさ、好きだった気持ちは本物でしょ」
莉子「……うん」



私だけ知らなかった恋の結末≪最終話≫ 私だけ知らなかった恋の結末
放課後・校舎前
莉子「瑛太」
瑛太「莉子……どうした?」
莉子「一つだけ、聞かせて」
莉子「好きな人、いるんでしょ」
瑛太「……うん」
莉子「栞、だよね」
(瑛太、少し驚いてからうなずく)
瑛太「ごめん」
莉子「謝らないで」
莉子「私が勝手に、勘違いしてただけだから」
(少し間)
莉子「でもね」
莉子「好きになった時間は、ちゃんと大事にする」
瑛太「……ありがとう」
(少し離れた場所で栞が立っている)
栞(気づいて、軽く会釈)
莉子(心の中)私だけ知らなかった恋はちゃんと、ここで終わった



私だけ知らなかった恋の結末 番外編~栞の視点 伝えられなかった想いのそばで~
放課後・廊下
栞(心の中)「ずっと、見てるだけだった」
(少し離れた場所で、瑛太と莉子が話している)
栞(心の中)「瑛太くんは、いつも誰かに優しくて。だから、勘違いされるんだって分かってた」

教室前
瑛太「栞、さっきのノートありがとう」
栞「ううん、大丈夫」
(短い沈黙)
栞(心の中)「話せただけで、嬉しくなる自分がいた」

中庭
莉子と真帆が話しているのを、少し離れて見る栞
栞(心の中)「莉子ちゃんが傷つくかもしれないこと。気づいてたのに、何も言えなかった」

夕方・校舎前
瑛太と莉子が向き合って話している
栞(心の中)「この時間が来るのを、待ってた。でも、少し怖かった」
(話が終わり、莉子が立ち去る)
栞(小さく)「……ありがとう」
瑛太「……栞?」
栞「ごめん、今の」
瑛太「ううん」
(沈黙)
栞「私、ずっと……」
栞「瑛太くんのこと、見てた」
瑛太「……うん」
栞「それだけで、十分だった」
瑛太「……俺も」
(夕焼けの中、二人が並んで立つ)
栞(心の中)「誰かの恋の終わりのそばで。私の恋は、静かに始まった」
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