桜の木の下で、出会った僕たち
昼食を食べ終わった後、モールに行く前に桜を一望できる展望台に向かうことにした。
展望台に向かう階段は古くて急だった。咲良が前を歩いて、僕がのこのこと後ろを歩く。
暑いのは久しぶりだったからだいぶ体が疲れていた。
そんな時、咲良の体がぐらりと後ろに揺れた。
「危ないっ!」
僕は手すりを右手で掴んで、左手で咲良を受け止める。
「咲良、大丈夫?」
腕の中にいた咲良は真っ白な顔をしていた。熱中症?寝不足?貧血?それともなんかの病気?
「えっ、あっ、光。ごめん」
瞑っていた目を開けて、そう言った。咲良のその声は、聞いたことのない細い声だった。
「ううん。それより大丈夫?」
「うん。なんか急にふらっとしてさ。多分貧血とかかな」
僕は咲良をギュッと抱きしめた。頑張って作る咲良の笑顔が見たくなかった。咲良は何があっても自分が守りたい。
「良かった」
咲良はありがと、と小さく耳元で呟いた。
「えっ、カメラが...」
肩に乗せていた顔を上げて、泣きそうな顔で僕を見つめる。
階段の下の方を振り返って見ると...カメラが一番下に落ちていた。多分咲良が倒れた時に...。
僕は声も出ずに、ただカメラを見つめていた。
あれはお父さんが家族を取るために買った高いカメラ。僕はそれを借りているだけ。僕の大切な宝物。何か落ちる音がしたのは知っていたけど、まさかそれがカメラだったなんて。大きな石でも落ちたんだと思っていた。
「ごめん...私が、、光の大切なカメラを...」
咲良は涙を流しながらそう言う。
「違う。咲良は何も悪くない。僕が適当に鞄に入れてたのが悪かっただけだから」
僕は流しそうな涙を何とか我慢しながら笑顔を作る。
「違う。私が...ほんとにごめんなさい」
咲良は僕から離れて階段を降りようとするが、また倒れそうになり、僕が咲良の手を取る。温もりのない冷たい手だった。
「ううん。咲良が無事で良かった。本当に」
咲良はううんと首を振る。
僕たちはゆっくりと階段を降りた。
カメラのレンズや画面に大きく傷が入っていた。…もう使えないだろうな。
複雑な思いのまま、カメラを撫でてみた。走馬灯のように、こいつと撮った写真が脳に甦ってくる。カメラが壊れたのはすごく嫌だけど、咲良が怪我とかする方が嫌だ。
僕は咲良の手を握ったまま家へと向かった。帰り道何度も何度もごめんと謝り、お金を貯めてから絶対に新しいカメラを買って返すと何度も言った。
違う。咲良に新しいカメラを弁償してほしいわけじゃないし、責めるつもりもない。だけどお父さんに何て言われるだろう...。
複雑な思いのまま家の近くで別れを告げる。カメラで繋がった僕たちが、カメラで関係が壊れてしまわないか怖い。明日から気まずくなるなんて絶対に嫌だ。
夜に咲良が倒れた時を思い出した時に、余命宣告されている主人公とその彼女の切ない物語をなぜか思い出した。
展望台に向かう階段は古くて急だった。咲良が前を歩いて、僕がのこのこと後ろを歩く。
暑いのは久しぶりだったからだいぶ体が疲れていた。
そんな時、咲良の体がぐらりと後ろに揺れた。
「危ないっ!」
僕は手すりを右手で掴んで、左手で咲良を受け止める。
「咲良、大丈夫?」
腕の中にいた咲良は真っ白な顔をしていた。熱中症?寝不足?貧血?それともなんかの病気?
「えっ、あっ、光。ごめん」
瞑っていた目を開けて、そう言った。咲良のその声は、聞いたことのない細い声だった。
「ううん。それより大丈夫?」
「うん。なんか急にふらっとしてさ。多分貧血とかかな」
僕は咲良をギュッと抱きしめた。頑張って作る咲良の笑顔が見たくなかった。咲良は何があっても自分が守りたい。
「良かった」
咲良はありがと、と小さく耳元で呟いた。
「えっ、カメラが...」
肩に乗せていた顔を上げて、泣きそうな顔で僕を見つめる。
階段の下の方を振り返って見ると...カメラが一番下に落ちていた。多分咲良が倒れた時に...。
僕は声も出ずに、ただカメラを見つめていた。
あれはお父さんが家族を取るために買った高いカメラ。僕はそれを借りているだけ。僕の大切な宝物。何か落ちる音がしたのは知っていたけど、まさかそれがカメラだったなんて。大きな石でも落ちたんだと思っていた。
「ごめん...私が、、光の大切なカメラを...」
咲良は涙を流しながらそう言う。
「違う。咲良は何も悪くない。僕が適当に鞄に入れてたのが悪かっただけだから」
僕は流しそうな涙を何とか我慢しながら笑顔を作る。
「違う。私が...ほんとにごめんなさい」
咲良は僕から離れて階段を降りようとするが、また倒れそうになり、僕が咲良の手を取る。温もりのない冷たい手だった。
「ううん。咲良が無事で良かった。本当に」
咲良はううんと首を振る。
僕たちはゆっくりと階段を降りた。
カメラのレンズや画面に大きく傷が入っていた。…もう使えないだろうな。
複雑な思いのまま、カメラを撫でてみた。走馬灯のように、こいつと撮った写真が脳に甦ってくる。カメラが壊れたのはすごく嫌だけど、咲良が怪我とかする方が嫌だ。
僕は咲良の手を握ったまま家へと向かった。帰り道何度も何度もごめんと謝り、お金を貯めてから絶対に新しいカメラを買って返すと何度も言った。
違う。咲良に新しいカメラを弁償してほしいわけじゃないし、責めるつもりもない。だけどお父さんに何て言われるだろう...。
複雑な思いのまま家の近くで別れを告げる。カメラで繋がった僕たちが、カメラで関係が壊れてしまわないか怖い。明日から気まずくなるなんて絶対に嫌だ。
夜に咲良が倒れた時を思い出した時に、余命宣告されている主人公とその彼女の切ない物語をなぜか思い出した。


