終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「……ほっ、しーほーっ……」
軽く揺さぶられて、うっすら瞼をあげる。
ぼんやりとした視界に、メガネ姿の王子が見えた。
「ん……おうじ?……あれ?メガネ――」
言いかけた言葉は、指先に消える。
「……ちょっ……何……」
「言ったよな『名前、呼べ』って」
「……おうじ」
「違う」
低く笑った綾人が、さらに顔を寄せる。
「じゃねぇと――次はまじで塞ぐ」
一度、指先は離されたけど、顔は近いまま。
香りも息もふれてとけあうほどに。
「っ……脅しじゃない!」
「知ってる」
そう言って額を軽く小突かれる。
お風呂あがりとメガネ姿で、色気が凶器すぎる。
「寝るならベッド行け、風邪引く」
「あたしはソファでいいから、王子が……あっ」
気づいた時にはもう遅かった。
「お前、わざとやってる?」
「なれないだけよっ……」
「ま、いいけど」
王子……じゃなくて、綾人が軽々と抱き上げて、ベッドの上に降ろす。
「寝るぞ」
「……え……」
「誰がソファで寝かすかよ」
当たり前のように布団をかけて、メガネを外した綾人も潜り込む。
部屋中に散らばっていた都会の光が、カーテンに遮られていく。
「・・・・・・一緒に寝るとか、聞いてない」
「聞いてないなら、今聞いたな」
抵抗してみても、すぐに無効化される。
手のひらで踊らされる感じだけど、嫌じゃ無くなってきてるから困る。
「なに、寝れない?」
「……当たり前でしょ……」
「あっそ」
短い返事のあと、綾人が腕を差し込み、抱き寄せた。
胸元に額を預けるも、綾人の温もりと同じ服の匂いにクラクラする。
「ん……」
背中にふれていた熱が、いつの間にか肌にゆっくり広がる。
「ちょっ・・・・・・綾人っ」
「うるさい、黙って寝ろ」
「……起きてたら、止まんねぇから」
「……綾人?」
せっかく名前で呼び掛けたのに返事がない。
代わりに聞こえてくるのは、規則正しい寝息だけ。
(……うそでしょ?先に寝たの?)
綾人の手は、素肌の腰にふれたまま。
服越しじゃない、肌から伝わる彼の鼓動や体温。
暗闇の中で、見えないからこそ、綾人の存在感が恐ろしいほど鮮明だ。
「……ひとりで勝手に、ドキドキしてるみたい……ずるい」
何がずるいのか、そんなの知らない。
怖いはずなのに、
逃げたいはずなのに——
この腕の中が、一番安心するなんて。
ただ、鑑賞用でいられたはずの距離が、もう戻らない気がした。
軽く揺さぶられて、うっすら瞼をあげる。
ぼんやりとした視界に、メガネ姿の王子が見えた。
「ん……おうじ?……あれ?メガネ――」
言いかけた言葉は、指先に消える。
「……ちょっ……何……」
「言ったよな『名前、呼べ』って」
「……おうじ」
「違う」
低く笑った綾人が、さらに顔を寄せる。
「じゃねぇと――次はまじで塞ぐ」
一度、指先は離されたけど、顔は近いまま。
香りも息もふれてとけあうほどに。
「っ……脅しじゃない!」
「知ってる」
そう言って額を軽く小突かれる。
お風呂あがりとメガネ姿で、色気が凶器すぎる。
「寝るならベッド行け、風邪引く」
「あたしはソファでいいから、王子が……あっ」
気づいた時にはもう遅かった。
「お前、わざとやってる?」
「なれないだけよっ……」
「ま、いいけど」
王子……じゃなくて、綾人が軽々と抱き上げて、ベッドの上に降ろす。
「寝るぞ」
「……え……」
「誰がソファで寝かすかよ」
当たり前のように布団をかけて、メガネを外した綾人も潜り込む。
部屋中に散らばっていた都会の光が、カーテンに遮られていく。
「・・・・・・一緒に寝るとか、聞いてない」
「聞いてないなら、今聞いたな」
抵抗してみても、すぐに無効化される。
手のひらで踊らされる感じだけど、嫌じゃ無くなってきてるから困る。
「なに、寝れない?」
「……当たり前でしょ……」
「あっそ」
短い返事のあと、綾人が腕を差し込み、抱き寄せた。
胸元に額を預けるも、綾人の温もりと同じ服の匂いにクラクラする。
「ん……」
背中にふれていた熱が、いつの間にか肌にゆっくり広がる。
「ちょっ・・・・・・綾人っ」
「うるさい、黙って寝ろ」
「……起きてたら、止まんねぇから」
「……綾人?」
せっかく名前で呼び掛けたのに返事がない。
代わりに聞こえてくるのは、規則正しい寝息だけ。
(……うそでしょ?先に寝たの?)
綾人の手は、素肌の腰にふれたまま。
服越しじゃない、肌から伝わる彼の鼓動や体温。
暗闇の中で、見えないからこそ、綾人の存在感が恐ろしいほど鮮明だ。
「……ひとりで勝手に、ドキドキしてるみたい……ずるい」
何がずるいのか、そんなの知らない。
怖いはずなのに、
逃げたいはずなのに——
この腕の中が、一番安心するなんて。
ただ、鑑賞用でいられたはずの距離が、もう戻らない気がした。