終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「スッキリしたか?」
「うん、歯ブラシとかもありがと」
「おぅ」

返事したものの、視線を外さない王子。

「……?」
「いいじゃん、俺のモノって感じで」
「……なっ」

一歩出遅れた反応に、意地悪な笑みを浮かべる。

「冷蔵庫とか適当に開けていいから、好きなの飲めよ。お前の好きなミルクティーもあるぞ」
「ありがと」 
「で、ベッドで待ってろ。寝室は右奥」

視線を向けた先。
ガラス越しに見えたベッドに、喉がきゅっと鳴る。

「俺も入ってくるわ」 
「志穂」
「……なに?」
「スッピンもいいじゃん」
 
「……やめてよほんと」

ベッドはもちろん、寝室に行く勇気もない。
結局、あたしはソファにごろんと転がる。
 
(……なんだかんだで落ち着く匂い)
 
オーバーサイズの王子の服も着心地が良い。    
部屋も、あたしも、彼の香りに包まれている。
それだけでのぼせてしまいそうだ。

瞼がゆっくり落ちてくる。

(もう……眠たいなぁ)

そのまま、ゆっくり目を閉じた。
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