終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
昨日も思ったけど——この男、全部が強引で早すぎる。
そう思うのに、綾人の行動ひとつひとつに、心の奥が跳ねてしまう。
「十分で準備しろ」
「え、無理——」
「できる」
言い切られて、それ以上何も言えなくなる。
(この……強引男がっ)
でもそんなところも、綾人の魅力なのかもと翻弄され始めている。
ってだめだめ!
しっかり自分を保たないと。
「あと」
振り返った綾人が、ふっと目を細めた。
「外でも設定忘れんなよ。完璧にやるんだろ?」
「……っ!!」
「あと、“王子”呼びも禁止な、笑いもんだろ」
それは、確かにそうだけど。
期間限定の婚約者なのに、そこまで徹底する必要があるのか。
「……じゃあ、なんて呼べばいいの」
わかってるくせに、あえて聞いた。
一瞬、黙った綾人が、一歩近づく。
「昨日、言ったよな。俺の名前は?」
低く少し甘みを含んだ声が、鼓膜をなぞる。
「……あや、と……」
名前を呼んだのはあたしなのに、背筋がぞくりとした。
「そう」
満足そうに、口元が緩んだ。
「やればできるじゃん」
まるでそう呼ぶことが、もうこの先もずっと決まっていたみたいに。
なんの躊躇いもなく彼が、「志穂」と呼ぶのと同じ比重。
「ほら、行くぞ」
当たり前みたいに肩を抱かれて、ベッドから降ろされる。
「着替え、手伝うか?」
「……大丈夫だからっ!」
「早くしろ、逃げんなよ」
耳打ちされた声に、熱が宿る。
まだ、心の準備なんて何もできていないのに。
タグを切って、水色のストライプ柄のワンピースに袖を通す。
「ほんとに……ぴったりだし……」
これはただのデートじゃない。
婚約者のフリ。
――そう思わないと、全部持っていかれそうだった。
そう思うのに、綾人の行動ひとつひとつに、心の奥が跳ねてしまう。
「十分で準備しろ」
「え、無理——」
「できる」
言い切られて、それ以上何も言えなくなる。
(この……強引男がっ)
でもそんなところも、綾人の魅力なのかもと翻弄され始めている。
ってだめだめ!
しっかり自分を保たないと。
「あと」
振り返った綾人が、ふっと目を細めた。
「外でも設定忘れんなよ。完璧にやるんだろ?」
「……っ!!」
「あと、“王子”呼びも禁止な、笑いもんだろ」
それは、確かにそうだけど。
期間限定の婚約者なのに、そこまで徹底する必要があるのか。
「……じゃあ、なんて呼べばいいの」
わかってるくせに、あえて聞いた。
一瞬、黙った綾人が、一歩近づく。
「昨日、言ったよな。俺の名前は?」
低く少し甘みを含んだ声が、鼓膜をなぞる。
「……あや、と……」
名前を呼んだのはあたしなのに、背筋がぞくりとした。
「そう」
満足そうに、口元が緩んだ。
「やればできるじゃん」
まるでそう呼ぶことが、もうこの先もずっと決まっていたみたいに。
なんの躊躇いもなく彼が、「志穂」と呼ぶのと同じ比重。
「ほら、行くぞ」
当たり前みたいに肩を抱かれて、ベッドから降ろされる。
「着替え、手伝うか?」
「……大丈夫だからっ!」
「早くしろ、逃げんなよ」
耳打ちされた声に、熱が宿る。
まだ、心の準備なんて何もできていないのに。
タグを切って、水色のストライプ柄のワンピースに袖を通す。
「ほんとに……ぴったりだし……」
これはただのデートじゃない。
婚約者のフリ。
――そう思わないと、全部持っていかれそうだった。