終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
そのあとも、何件か店をまわり、必要なものを買い足していく。
あたしもお金を出すといっても、頑なに受け取らなかった。
「俺がいる意味なくなるだろ」
「なにそれ」
途中で夕飯も済ませ、綾人のマンションに帰ってきた。
ひとまず荷物を置いて、綾人がコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。
あたしは荷物の山を見つめながら、ソファに座りぽつりとつぶやく。
「ねぇ、本気で一緒に住むの?」
「今さら。買い物してただろうが」
「普通はもっと大人しくて聞き分けいい女性を選ぶんじゃないの?」
我ながら可愛くない言い方だ。
コーヒーの香りと一緒に聞こえてきたのは、不思議そうな綾人の声。
「そうか?」
「絶対そう」
「つまんねぇじゃん」
「え?」
「親父の前で猫かぶる女なんか腐るほど見てきた。でもお前、思ったこと全部顔に出るし」
振り返った綾人が、当然みたいに言い切る。
「志穂のそういう自然なところ、必要なんだよ」
あたしは観念して、コーヒーカップを受け取る。
それとは別に、差し出されたカードキー。
さっき、綾人が玄関を開けるときに使ったものと同じもの。
「これ、まさか――」
「ここは、お前の家でもあるから」
カードキーの重みが、指先にじんわり残る。
逃げ道が増えたんじゃない。
逃げられない場所が、ひとつ増えただけ。
それなのに、胸の奥は少しだけ温かかった。
——ただの飲み友達には、もう戻れない。
あたしもお金を出すといっても、頑なに受け取らなかった。
「俺がいる意味なくなるだろ」
「なにそれ」
途中で夕飯も済ませ、綾人のマンションに帰ってきた。
ひとまず荷物を置いて、綾人がコーヒーを淹れにキッチンへ向かう。
あたしは荷物の山を見つめながら、ソファに座りぽつりとつぶやく。
「ねぇ、本気で一緒に住むの?」
「今さら。買い物してただろうが」
「普通はもっと大人しくて聞き分けいい女性を選ぶんじゃないの?」
我ながら可愛くない言い方だ。
コーヒーの香りと一緒に聞こえてきたのは、不思議そうな綾人の声。
「そうか?」
「絶対そう」
「つまんねぇじゃん」
「え?」
「親父の前で猫かぶる女なんか腐るほど見てきた。でもお前、思ったこと全部顔に出るし」
振り返った綾人が、当然みたいに言い切る。
「志穂のそういう自然なところ、必要なんだよ」
あたしは観念して、コーヒーカップを受け取る。
それとは別に、差し出されたカードキー。
さっき、綾人が玄関を開けるときに使ったものと同じもの。
「これ、まさか――」
「ここは、お前の家でもあるから」
カードキーの重みが、指先にじんわり残る。
逃げ道が増えたんじゃない。
逃げられない場所が、ひとつ増えただけ。
それなのに、胸の奥は少しだけ温かかった。
——ただの飲み友達には、もう戻れない。