終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
軽く言い返すその声に、あたしはまだ何かあるのかと勘ぐってしまう。
運ばれた飲み物を二人で受け取ると、前方のステージが明るくなった。
進行係のアナウンスが、開幕を告げると、グラスを手にした綾人のお父さんが壇上に上がる。
「皆様、この度はワタセホテル九十周年、そして私の社長就任三十周年の記念パーティーに、ようこそお越しくださいました」
あたしは周りと同じように拍手するも、引っかかりを覚える。
(綾人のお父さん・・・・・・社長・・・・・・ワタセホテル周年?んん?)
「——では、乾杯っ」
「乾杯っ」
気づけば乾杯の挨拶が終わり、綾人があたしのグラスを合わせる。
「ねぇ・・・・・・綾人、ひとつ確認していい?」
「まぁ、お前の言いたいこと、わかってるけどな」
「……じゃ、やっぱりあんた——」
言いかけたあたしの言葉は、綾人のお父さんに遮られた。
「紹介します、次期後継者である息子の綾人です。さぁ、こちらに来なさい」
一斉に会場中の媚びるような視線が、綾人に集中する。
もちろん、隣に立っているあたしにも。
(後継者……だから、みんなあんな顔してるのね)
(って!経営企画部って言ってたじゃない!)
ジト目で睨むと、綾人は小さく笑った。
そして少しだけ屈んで、そっと囁く。
「ちょっと行ってくるから。いい子で待ってろ」
一瞬だけ強く腰を抱きしめたあと、綾人はそのまま壇上へ向かった。
「綾人……」
その彼を追うように、場内の視線もあたしから離れていく。
「藤垣綾人です。本日はお越しいただき、ありがとうございます」
「若輩者ですが、皆様のご期待に応えられるよう努めてまいります」
「今後ともよろしくお願いいたします」
湧き上がる拍手と、聞こえてくる聴衆の声。
「さすが、次期社長だな」
「眉目秀麗な上、優秀さも折り紙付きと聞いている」
「それはワタセホテルも安泰だな」
口々に綾人を賞賛する声が聞こえてくる。
軽く会釈してそのまま、拍手の中、壇上から降りようとした。
すると綾人の父である社長がマイクを手に取り、綾人の腕を捕まえる。
「実はもう一方、ご紹介いたします。九条グループご令嬢の九条麗華さんです」
スポットライトが彼女に当たると、臆すること無く優雅に登壇していく。
そして綾人の横に立つと、社長は誇らしげに紹介を続けた。
「九条家とは長い付き合いでしてね」
「麗華さんには幼い頃から親しくしていただいております。ワタセホテルにとっても大切な存在です」
先ほどとは打って変わった華のある微笑みで、会場の空気を魅了する。
違う。
笑顔だけじゃない、彼女の存在そのものが、格の違いを知らされる。
運ばれた飲み物を二人で受け取ると、前方のステージが明るくなった。
進行係のアナウンスが、開幕を告げると、グラスを手にした綾人のお父さんが壇上に上がる。
「皆様、この度はワタセホテル九十周年、そして私の社長就任三十周年の記念パーティーに、ようこそお越しくださいました」
あたしは周りと同じように拍手するも、引っかかりを覚える。
(綾人のお父さん・・・・・・社長・・・・・・ワタセホテル周年?んん?)
「——では、乾杯っ」
「乾杯っ」
気づけば乾杯の挨拶が終わり、綾人があたしのグラスを合わせる。
「ねぇ・・・・・・綾人、ひとつ確認していい?」
「まぁ、お前の言いたいこと、わかってるけどな」
「……じゃ、やっぱりあんた——」
言いかけたあたしの言葉は、綾人のお父さんに遮られた。
「紹介します、次期後継者である息子の綾人です。さぁ、こちらに来なさい」
一斉に会場中の媚びるような視線が、綾人に集中する。
もちろん、隣に立っているあたしにも。
(後継者……だから、みんなあんな顔してるのね)
(って!経営企画部って言ってたじゃない!)
ジト目で睨むと、綾人は小さく笑った。
そして少しだけ屈んで、そっと囁く。
「ちょっと行ってくるから。いい子で待ってろ」
一瞬だけ強く腰を抱きしめたあと、綾人はそのまま壇上へ向かった。
「綾人……」
その彼を追うように、場内の視線もあたしから離れていく。
「藤垣綾人です。本日はお越しいただき、ありがとうございます」
「若輩者ですが、皆様のご期待に応えられるよう努めてまいります」
「今後ともよろしくお願いいたします」
湧き上がる拍手と、聞こえてくる聴衆の声。
「さすが、次期社長だな」
「眉目秀麗な上、優秀さも折り紙付きと聞いている」
「それはワタセホテルも安泰だな」
口々に綾人を賞賛する声が聞こえてくる。
軽く会釈してそのまま、拍手の中、壇上から降りようとした。
すると綾人の父である社長がマイクを手に取り、綾人の腕を捕まえる。
「実はもう一方、ご紹介いたします。九条グループご令嬢の九条麗華さんです」
スポットライトが彼女に当たると、臆すること無く優雅に登壇していく。
そして綾人の横に立つと、社長は誇らしげに紹介を続けた。
「九条家とは長い付き合いでしてね」
「麗華さんには幼い頃から親しくしていただいております。ワタセホテルにとっても大切な存在です」
先ほどとは打って変わった華のある微笑みで、会場の空気を魅了する。
違う。
笑顔だけじゃない、彼女の存在そのものが、格の違いを知らされる。