終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
休憩室の自販機でミルクティーを選ぶ。
誰もいない部屋で、ひとりごちる。
「……綾人の淹れたのが飲みたい」
思わず零れた言葉に、自分で驚く。
別にミルクティーなんてどこでも飲めるのに。
でも、舌先のものとは違う、甘くて優しい味を思い出す。
同時に、綾人が寛ぐ姿も。
(……何してんのよ、ばか綾人)
(……って、今はそうじゃない。仕事のミスは、仕事で挽回するっ)
あたしは気持ちを切り替えるように、ミルクティーを飲み干した。
デスクに戻ると、受話器を持った後輩が呼び止める。
「ちょうどよかった!外線一番に、九条クリエイティブパートナーズの九条様からお電話です。なんでも先輩の知り合いだとか……」
「九条クリエイティブパートナーズ……まさかっ」
あたしは変な動悸がする胸をおさえながら、電話に出る。
「お待たせいたしました、藤原でございます」
「お久しぶりです、九条麗華です。藤原さま、今お時間よろしいでしょうか」
「はい。ご用件は——」
やっぱり九条さんだった。
どうやら、急ぎ依頼したい案件があるとのこと。
「では、早速ですが、一時間後にお会いしましょう」
「かしこまりました。御社に伺えばよろしいでしょうか」
「いいえ、ワタセホテルのロビーラウンジで」
(え……ワタセホテル……?!)
すぐ脳裏に浮かんだのは、綾人の顔だった。
内心の動揺を悟られないように、営業スマイルのまま電話を切った自分を褒めたい。
「……なんでまたワタセホテルなのよ」
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん……ちょっと課長に報告してくる」
九条さんが何を考えてるのか分からないが、とにかく行くしかない。
課長からは「大口だが、藤原ならいける!」と太鼓判を押された。
商談モードに切り替えて、あたしは奮い立たせるように、リップを引き直した。
誰もいない部屋で、ひとりごちる。
「……綾人の淹れたのが飲みたい」
思わず零れた言葉に、自分で驚く。
別にミルクティーなんてどこでも飲めるのに。
でも、舌先のものとは違う、甘くて優しい味を思い出す。
同時に、綾人が寛ぐ姿も。
(……何してんのよ、ばか綾人)
(……って、今はそうじゃない。仕事のミスは、仕事で挽回するっ)
あたしは気持ちを切り替えるように、ミルクティーを飲み干した。
デスクに戻ると、受話器を持った後輩が呼び止める。
「ちょうどよかった!外線一番に、九条クリエイティブパートナーズの九条様からお電話です。なんでも先輩の知り合いだとか……」
「九条クリエイティブパートナーズ……まさかっ」
あたしは変な動悸がする胸をおさえながら、電話に出る。
「お待たせいたしました、藤原でございます」
「お久しぶりです、九条麗華です。藤原さま、今お時間よろしいでしょうか」
「はい。ご用件は——」
やっぱり九条さんだった。
どうやら、急ぎ依頼したい案件があるとのこと。
「では、早速ですが、一時間後にお会いしましょう」
「かしこまりました。御社に伺えばよろしいでしょうか」
「いいえ、ワタセホテルのロビーラウンジで」
(え……ワタセホテル……?!)
すぐ脳裏に浮かんだのは、綾人の顔だった。
内心の動揺を悟られないように、営業スマイルのまま電話を切った自分を褒めたい。
「……なんでまたワタセホテルなのよ」
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん……ちょっと課長に報告してくる」
九条さんが何を考えてるのか分からないが、とにかく行くしかない。
課長からは「大口だが、藤原ならいける!」と太鼓判を押された。
商談モードに切り替えて、あたしは奮い立たせるように、リップを引き直した。