終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
カードキーをかざして、玄関ドアを開ける。
静まりかえった玄関に、ぽんぽんと明かりが点いていく。
家主である綾人はまだ帰って来ていない。       
身の危険があるわけじゃない。
それでもいい加減、連絡のひとつくらい寄越してほしい。

(……もう、やだっ、ばかっ) 
 
カバンを置いて、ソファに倒れ込んだ。

「……しんどい」

静かなリビングを見渡す。
いつも散らかっているはずの綾人の書類もない。
飲みかけのコーヒーもない。
 
「……帰ってこないな」
 
誰に向けるでもなく呟いた声だけが、静かな部屋に落ちた。
 
しばらくして。
クッションに顔を埋めたまま、ぽつりと呟く。
 
「さみしい」
 
その言葉が、自分のものとは思えなかった。 
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