終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
結局、今回の企画であたしも鮫島も、担当を外されることはなかった。
最初は萎縮してしまってた鮫島も、綾人をはじめ九条さんたちからの喝が効いたみたいだ。
今はより慎重に、でも恐れないで業務に取り組んでいる。
——じゃあ、あたしは?
「藤原さん大丈夫?」
「大丈夫です」
正直、今までだってミスをしたことなんて、数えきれないくらいある。
にっこり笑って、平気なフリをして見せることにも慣れている。
ただその顔は、行き場をなくして、張りついているだけだ。
ワタセホテルで打ち合わせの帰りに、「ちょっとこっち来い」と空き部屋に連れ込まれた。
そのまま、無理やり椅子に座らされる。
「その顔どうした?」
「え?……」
「まだ何かあるのか」
綾人が顔を近づけ、頬を撫でる。
その至近距離で、初めて気付いた目の下にあるクマ。
(違う……寝不足なのは綾人だ……)
あたしには見えないところで、今回の騒動の尻拭いをしてるんじゃないか。
ここ最近、帰りが遅いのも。
朝早く家を出てるのも。
——あたしがミスをしたせいだ
「ごめんなさい……」
「なんでお前が謝る」
「あたしがミスしたから」
「確認してねぇだろ」
(違う……)
「鮫島にも責任はある」
(あたしが管理できてないから……)
「全部抱えんな」
少し怒気を含んだ声に、ますます、あたしは申し訳なさでいっぱいになる。
「でも私が任せたから」
「あのなぁ」
綾人が言いかけたとき、胸ポケットのスマホが鳴る。
舌打ちしながら電話に出た後、綾人が時計を見る。
「悪い、戻る」
「……うん」
ドアノブに手を掛けた綾人が振り返る。
「ミルクティー淹れてやるから、ちゃんと帰れよ」
それだけ言って、今度こそ出ていった。
優しいはずの声音なのに、あたしには猛毒のようにしばらく立ち上がれなかった。
最初は萎縮してしまってた鮫島も、綾人をはじめ九条さんたちからの喝が効いたみたいだ。
今はより慎重に、でも恐れないで業務に取り組んでいる。
——じゃあ、あたしは?
「藤原さん大丈夫?」
「大丈夫です」
正直、今までだってミスをしたことなんて、数えきれないくらいある。
にっこり笑って、平気なフリをして見せることにも慣れている。
ただその顔は、行き場をなくして、張りついているだけだ。
ワタセホテルで打ち合わせの帰りに、「ちょっとこっち来い」と空き部屋に連れ込まれた。
そのまま、無理やり椅子に座らされる。
「その顔どうした?」
「え?……」
「まだ何かあるのか」
綾人が顔を近づけ、頬を撫でる。
その至近距離で、初めて気付いた目の下にあるクマ。
(違う……寝不足なのは綾人だ……)
あたしには見えないところで、今回の騒動の尻拭いをしてるんじゃないか。
ここ最近、帰りが遅いのも。
朝早く家を出てるのも。
——あたしがミスをしたせいだ
「ごめんなさい……」
「なんでお前が謝る」
「あたしがミスしたから」
「確認してねぇだろ」
(違う……)
「鮫島にも責任はある」
(あたしが管理できてないから……)
「全部抱えんな」
少し怒気を含んだ声に、ますます、あたしは申し訳なさでいっぱいになる。
「でも私が任せたから」
「あのなぁ」
綾人が言いかけたとき、胸ポケットのスマホが鳴る。
舌打ちしながら電話に出た後、綾人が時計を見る。
「悪い、戻る」
「……うん」
ドアノブに手を掛けた綾人が振り返る。
「ミルクティー淹れてやるから、ちゃんと帰れよ」
それだけ言って、今度こそ出ていった。
優しいはずの声音なのに、あたしには猛毒のようにしばらく立ち上がれなかった。