終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
すぐ真上から落ちてくる低い声。
同時に、後ろから伸びてきた腕と、スパイシーでウッディな香りに囲われる。
誰かなんて聞かなくても分かる。
「あや……と……」
「早かったね、綾人」
「当たり前だろ」
「なんで……?」
ぐちゃぐちゃな顔を見られたくなくて、とっさにおしぼりで覆う。
無駄な抵抗と言わんばかりに、すぐに剥がされた。
歪んだ視界に、スーツ姿の綾人が映っている。
「こっちのセリフだ、バカ」
「あたし……離れなきゃって……」
「だから、迎えにきた」
あたしの手からグラスを奪い取ると、そのまま飲み干す。
まるで、ブルームーンに隠された意味ごと——。
「ちゃんと返してもらうからね」
「分かってる、ありがとな勇」
綾人はあたしの荷物を持って、腕を引っ張り上げる。
「帰るぞ」
手を振るマスターと阪野先生を後に、お店を出る。
夜空に浮かんだ三日月と終電のアナウンス。
繋がれた右手のぬくもりに、さっきまでの寂しさが嘘みたいに消えていった。
同時に、後ろから伸びてきた腕と、スパイシーでウッディな香りに囲われる。
誰かなんて聞かなくても分かる。
「あや……と……」
「早かったね、綾人」
「当たり前だろ」
「なんで……?」
ぐちゃぐちゃな顔を見られたくなくて、とっさにおしぼりで覆う。
無駄な抵抗と言わんばかりに、すぐに剥がされた。
歪んだ視界に、スーツ姿の綾人が映っている。
「こっちのセリフだ、バカ」
「あたし……離れなきゃって……」
「だから、迎えにきた」
あたしの手からグラスを奪い取ると、そのまま飲み干す。
まるで、ブルームーンに隠された意味ごと——。
「ちゃんと返してもらうからね」
「分かってる、ありがとな勇」
綾人はあたしの荷物を持って、腕を引っ張り上げる。
「帰るぞ」
手を振るマスターと阪野先生を後に、お店を出る。
夜空に浮かんだ三日月と終電のアナウンス。
繋がれた右手のぬくもりに、さっきまでの寂しさが嘘みたいに消えていった。