終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない
「綾人にちゃんと聞いてみた?」
(聞いたら、綾人はあたしのこと、幻滅するでしょ?)
「聞けないですよ、そんなこと」
(本当の自分を知られるのが、怖い)
「どうして?綾人って器が小さいようには見えないけどなぁ」
分かってる。
綾人も、九条さんも。
いつだって、あたしを否定しなかった。
「綾人がイヤなやつなら良かった…」
「九条さんがもっともっと嫌な人なら良かった……」
「そしたらあたし、ちゃんと嫌いになれたのに……」
阪野先生が首を傾げながら、あたしを真っ直ぐ見る。
「それで?綾人のこと嫌いになれた?」
「ちがう……ほんとは……」
言いかけて気付く。
手を組んだ拍子に見えたシルバーのチェーン。
一番返さなきゃいけなかったものが、今も側にあった。
『迷子防止。外すなよ』
鼻の奥がツンと痛い。
もう、堪えられなかった。
「こんなこと思ってる自分がもっといや…」
「幻滅されたくない……綾人に……嫌われたら……どうしようっ」
「鑑賞用で線を引いてたはずなのにっ」
「ただの婚約者のフリだったのに……」
(なんで嫌われたくないって……)
——あぁ、そうか。
(あたし、とっくに……綾人に恋に落ちてたんだ)
隠れて気付かなかった心の奥の本当の答え。
甘く切ない痛みが、涙となってぼろぼろとあふれ落ちていく。
堪えられない。
止まらない。
子どもみたいに泣きじゃくる。
阪野先生が、諭すように優しく言葉をかけてくれる。
「俺が拭いてあげてもいいけど…藤原さんはわかってるでしょ。誰にしてほしいか」
声にならない代わりに、何度も頷く。
そして、やっとの思いでその名を呼んだ。
「……綾人が……いいっ」
「なら、逃げんなよ」
(聞いたら、綾人はあたしのこと、幻滅するでしょ?)
「聞けないですよ、そんなこと」
(本当の自分を知られるのが、怖い)
「どうして?綾人って器が小さいようには見えないけどなぁ」
分かってる。
綾人も、九条さんも。
いつだって、あたしを否定しなかった。
「綾人がイヤなやつなら良かった…」
「九条さんがもっともっと嫌な人なら良かった……」
「そしたらあたし、ちゃんと嫌いになれたのに……」
阪野先生が首を傾げながら、あたしを真っ直ぐ見る。
「それで?綾人のこと嫌いになれた?」
「ちがう……ほんとは……」
言いかけて気付く。
手を組んだ拍子に見えたシルバーのチェーン。
一番返さなきゃいけなかったものが、今も側にあった。
『迷子防止。外すなよ』
鼻の奥がツンと痛い。
もう、堪えられなかった。
「こんなこと思ってる自分がもっといや…」
「幻滅されたくない……綾人に……嫌われたら……どうしようっ」
「鑑賞用で線を引いてたはずなのにっ」
「ただの婚約者のフリだったのに……」
(なんで嫌われたくないって……)
——あぁ、そうか。
(あたし、とっくに……綾人に恋に落ちてたんだ)
隠れて気付かなかった心の奥の本当の答え。
甘く切ない痛みが、涙となってぼろぼろとあふれ落ちていく。
堪えられない。
止まらない。
子どもみたいに泣きじゃくる。
阪野先生が、諭すように優しく言葉をかけてくれる。
「俺が拭いてあげてもいいけど…藤原さんはわかってるでしょ。誰にしてほしいか」
声にならない代わりに、何度も頷く。
そして、やっとの思いでその名を呼んだ。
「……綾人が……いいっ」
「なら、逃げんなよ」