好きなのは匂いだけだったはずなのに。〜完璧上司の独占欲が止まりません〜
「ーー好きだ」

その言葉はまっすぐに胸の奥に落ちた。

安心する白石部長の匂い。
やっと探していた匂いを見つけた気がした。

けど、私はもうこの匂いだけじゃ我慢できなくなるくらい欲張りになっていた。

その瞳も、その優しい声も。
私だけを見つめていてほしい、という欲求も。

「私も白石部長が好きです」

広い背中に手を回して深く息を吸う。

「……本当に俺を?匂いだけじゃなくて?」

添えた手に筋肉が強ばった感触が伝わってくる。

「……たしかに白石部長の匂いが好きです。優しくて柔らかくて。……最近、匂いがしなかったのは寂しかったですけど」
「っ、」

息を呑んだ白石部長に「でも」と言葉を続ける。

「それ以上に私が好きなのは白石部長なんです」

「……なんだか、かっこ悪いな俺」と小さく囁かれたその声に胸の奥が甘く疼く。
そっと胸元に寄せてた顔をあげると、白石部長が僅かに視線を彷徨わせてから、口を開く。

「情けないな。水瀬の前だとかっこ悪いところばかり見せてしまうな」
「……それって私が特別みたいで、嬉しいです」

私の言葉に目を見開いていた白石部長が、眩しそうに目を細めた。

抱きしめられてからずっと気になっていた存在に「あのこれって……?」とジャケットのポケットに入れたままのそれを指差すと白石部長は言いづらそうに視線を逸らす。

「……実は消臭スプレーを使ってた」
「え!どうしてですか!?」

私が白石部長の匂いが好きだって知ってるはずなのに。

「……水瀬に、」

そこで言葉を切った白石部長が私を見つめる。

「俺自身を意識してもらいたかった」

心臓が痛いくらい跳ねて思わず開いた口がはく、と言葉にならずに空気を吐く。
顔が熱い。
私を見つめる白石部長の視線で溶けてしまいそう。

「……まさか、自分の匂いに嫉妬する日が来るとは俺も思わなかった」

ぎゅっと目を瞑った先で、ふっ、と空気が震えた気がして僅かに目を開けると優しく笑った白石部長がおもむろに手を伸ばす。

頬に触れた手から、ふわりと届く白石部長の匂い。

きっと私はこれからもこの匂いが好き。
でも、それ以上に。

その手に私の手を重ねて頬をよせて、白石部長を見つめる。

「……白石部長が何よりも好きです」

私は、この人が好き。

好きになったきっかけは確かに匂いかもしれない。
だけど今は白石部長が好き。

「……俺も、水瀬が好きだよ」

頬を撫でる白石部長の瞳は甘くて、見ているだけで溶けてしまいそうだった。

「匂いだけじゃなくて、これからは俺のことも見ていてくれ。……じゃないとまた嫉妬するからな」

そう言って近づいてくる顔にそっと瞳を閉じた。

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