カフェオレでも飲みながら

10.春








 伊織は塾に通っている。


 伊織の家はお金持ちなので、中学受験をするかもしれないという。


 私は受験をしないので、その話を珍しいものとして聞いていた。



「もうすぐ卒業だね」



 教室で、私が言った。



「ほんとにね」



 依登が言った。




「中学で別れるなんて。寂しくなるね」

「うん。家は変わらないけどね」




 私はため息をついた。




「別の学校に通うなんて、変な感じ。朝も会わないのかな」

「多分ね」

「寂しいな。ほとんど会えないなんて」

「会えるけど。寂しいって、本当にそう思ってくれる?」




 私は照れくさくなって何も言わなかった。



 教室には風が吹いていた。

 窓が開けてあって、そこから心地よい晴れた外の空気が流れ込んでくるのだ。


 伊織が言った。



「朝田さんが僕を好きで、離れたくないって言ってくれたらな。そしたら、受験なんてしないことにするよ」



 伊織はまっすぐ私を見て、本当に言ってるよと言ったのだった。











おわり






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